動物病院の求人

【本音対談】動物病院の採用担当と獣医学生、就活で何がすれ違っているのか

「志の高い学生に来てほしい」と願う動物病院と、「まずは働きやすさを確かめたい」と考える獣医学生。
どちらも本気で就活に向き合っているのに、話がかみ合わない場面を何度も見てきました。


Pettie獣医師キャリアは、VCESのイベントで全国の獣医大学を回り、動物病院の採用担当の方とも、就活中の学生とも直接話をしてきました。
そこで見えたのは、双方の「本音」が驚くほどすれ違っているという現実です。


この記事では、採用担当と学生、それぞれの本音をできるだけ率直に紹介します。
どちらかを悪者にするつもりはありません。
すれ違いの正体を知ることが、お互いにとって納得のいくマッチングへの第一歩だと考えているからです。

目次

  1. 採用担当の本音:「最初の質問が給与と休み」だと、正直ちょっと身構える
  2. 獣医学生の本音:「働き続けられるか」が何より先
  3. すれ違いの正体:同じ言葉を、違う意味で使っている
  4. どちらも間違っていない。でも、どちらも少しずつ損をしている
  5. 獣医学生へ:条件は聞いていい。「なぜ聞くのか」を添えよう
  6. 動物病院の採用担当へ:条件は先に見せ、「成長の道筋」で選ばれる
  7. まとめ:「条件」と「志」は対立しない

採用担当の本音:「最初の質問が給与と休み」だと、正直ちょっと身構える

採用担当の方々から最もよく聞いたのは、こんな声です。

「給与や福利厚生を気にするのは当然だと思っています。
ただ、見学や面接で真っ先に聞かれるのが『休みは何日ですか』『給料はいくらですか』だと、正直ちょっと身構えてしまうんです」

誤解のないように言うと、条件を確認すること自体を否定している採用担当はほとんどいません。
引っかかっているのは「順番」と「比重」です。
最初に条件の話だけが出て、そのまま終わってしまうと、「この学生はうちで何をしたいんだろう」という問いに答えが見えないまま選考が進んでしまいます。

病院が本当に欲しいのは「伸びたい」と言える学生

では、採用担当はどんな学生を求めているのか。
多く挙がったのは次のようなイメージです。

  • 将来の開業や専門分野など、自分なりのキャリアの方向性を持っている
  • 「この症例を診られるようになりたい」「外科を身につけたい」など、成長したいことを具体的に話せる
  • 忙しい時期や難しい症例にも前向きに向き合える

背景にあるのは、新卒獣医師の育成にかかる時間とコストです。
一人前に育つまでには先輩獣医師の時間を大きく割くことになります。
だからこそ病院は「育てがいがある人」「長く一緒に成長してくれる人」を見極めたいのです。

採用担当がこぼした、もう一つの本音

一方で、こんな声もありました。

「休みの多さで比べられると、大きな病院や都市部の病院にはどうしても勝てない。
だから、うちならではの成長環境を見てほしいんです」

「志の高い学生が欲しい」という言葉の裏には、条件面の競争だけでは選ばれにくいという、病院側の切実な事情も隠れています。

獣医学生の本音:「働き続けられるか」が何より先

学生に「病院選びで一番大事なことは?」と聞くと、返ってくる答えはかなりはっきりしています。

  • QOL・ワークライフバランス(休日数、残業、当直の有無)
  • 立地(都市部や地元、通いやすさ)
  • 病院の綺麗さ・設備
  • 給与

そして教育体制については、「大事だとは思うけど、確認するのはその次」という声が多数派でした。

「楽をしたい」わけではない

ここで強調しておきたいのは、学生たちの多くが「楽をしたいから」条件を重視しているわけではない、ということです。
話を聞くと、こんな言葉が出てきます。

「先輩から、休みがなくて体を壊して辞めた話を聞いたんです。長く獣医師を続けるために、まず生活が成り立つ病院を選びたい」

「奨学金の返済もあるし、一人暮らしを始めるなら給料は現実的に大事です」

「教育体制はどこも『しっかりしています』と書いてあって、正直違いがわからない。だったら比べやすい条件から見るしかない」

6年間の学びを終えて社会に出る学生にとって、最初の職場は人生の土台です。
条件面を先に確かめるのは、自分の将来を守るための、ある意味で合理的な行動なのです。

学生が言いにくい、もう一つの本音

「将来どうなりたいか、まだはっきり決まっていない」という学生も少なくありません。
開業や専門分野を語れるほど将来像が固まっていないからこそ、まずは安心して働ける環境を選び、そこでじっくり考えたい。
そんな気持ちも、条件重視の背景にあります。

すれ違いの正体:同じ言葉を、違う意味で使っている

双方の話を並べてみると、ギャップは「価値観の違い」だけでは説明できません。
同じ質問や言葉が、立場によってまったく違う意味に受け取られているのです。

場面 学生の意図 採用担当の受け取り方
見学で最初に休日数を聞く 長く働き続けられるか確かめたい 仕事より休みを優先する人かもしれない
給与を詳しく確認する 奨学金や生活設計のため 条件だけで病院を選んでいる
都市部の病院を志望する 生活環境や通いやすさを重視 地方の病院には目もくれない
将来像を語れない まだ決めきれていない、正直に答えている 志や意欲が足りない
教育体制を詳しく聞かない どこも同じに見えて比べられない 成長に興味がない

このすれ違いを生んでいる背景には、大きく三つの要因があります。

1. 世代の価値観の変化
「若いうちは寝る間を惜しんで修業」が当たり前だった世代と、「心身の健康を守りながら働く」ことを重視する世代とでは、働き方の前提が違います。
2. 業界構造への不安
長時間労働や当直、早期離職の話は学生の耳にも入っています。
条件の確認は、その不安への自衛策でもあります。
3. 情報の非対称
給与や休日は数字で比べられますが、教育体制は外から見えにくい。
比べられる情報から判断するしかない学生と、数字では伝わらない魅力をわかってほしい病院。
ここに大きな溝があります。

どちらも間違っていない。でも、どちらも少しずつ損をしている

率直に言えば、採用担当の言い分も、学生の言い分も、どちらも筋が通っています。
問題は「正しさ」ではなく、伝え方と確かめ方のずれにあります。

学生が損をしているところ

条件の質問ばかりで見学や面接を終えると、病院側にあなたの意欲や人柄が伝わらないまま評価されてしまいます。
本当は成長意欲があるのに、もったいない誤解を生んでいるケースは少なくありません。

また、条件だけで選んだ病院が、実は教育が手薄で、一人で診療を任されて苦しむ――という話も現実にあります。
働きやすさは休日数だけでなく、「困ったときに相談できる先輩がいるか」にも大きく左右されます。
教育体制は、実はQOLそのものに直結しているのです。

病院が損をしているところ

一方で、条件を気にする学生を「志が低い」と判断してしまうと、本当は長く活躍できたはずの人材を逃すことになります。
休みや給与を確認する学生は、むしろ「長く働き続けたい」と考えている学生でもあります。

さらに、「志の高い学生が欲しい」と言いながら、教育体制やキャリアの道筋を具体的に見せられていない病院も少なくありません。
学生が教育体制を比べられないのは、病院側が比べられる形で情報を出していないから、という面もあるのです。

獣医学生へ:条件は聞いていい。「なぜ聞くのか」を添えよう

1. 質問の「理由」をセットで伝える

同じ質問でも、理由があるだけで印象はまったく違います。

  • ×「休みは何日ですか?」
  • ○「長く獣医師として成長し続けたいので、休日や勤務時間の実態も教えていただけますか?」

2. 最初の質問は「成長」から

見学や面接の最初は、教育や診療について聞いてみましょう。
条件の質問はその後でも十分間に合います。

  • 「入職1年目は、どんな流れで診療に入っていきますか?」
  • 「先輩の獣医師さんは、どんなキャリアを歩まれていますか?」

3. 教育体制は「具体的に」確かめる

「教育体制は充実しています」という言葉だけで判断せず、中身を聞き出すのがコツです。

  • 指導担当はつくか、誰に相談できるか
  • 一人で当直や診察を任されるのはいつ頃からか
  • 勉強会やセミナー参加の支援はあるか
  • 実際に何年目の獣医師が、どのくらい在籍しているか

最後の項目は特に重要です。
若手が定着している病院は、教育と働きやすさの両方が機能している可能性が高いと言えます。

4. 将来像が決まっていなくても大丈夫

開業や専門分野を語れなくても問題ありません。
「まだ決めきれていないからこそ、幅広い症例を経験して方向性を見つけたい」と正直に伝えれば、それも立派な志です。

動物病院の採用担当へ:条件は先に見せ、「成長の道筋」で選ばれる

学生が条件を気にするのは、裏を返せば「長く働きたい」というサインです。
その気持ちに応えたうえで、自院ならではの魅力を伝えることが、志のある学生と出会う近道になります。

1. 条件は隠さず、先に出す

給与、休日、残業、当直の実態は、求人票や説明会の段階でできるだけ具体的に示しましょう。
学生が質問しなくても答えがわかる状態にしておけば、見学や面接の時間を「成長」や「やりがい」の話に使えます。

2. 教育体制を「比べられる形」で見せる

「教育に力を入れています」だけでは、学生には他院との違いが伝わりません。

  • 1年目・3年目・5年目にできるようになることの目安
  • 指導担当の有無と、相談できる体制
  • 外部セミナーや学会参加の支援内容
  • 先輩獣医師の実際のキャリア(分院長、専門分野、開業など)

こうした中身を具体的に示すことで、学生ははじめて教育体制を判断材料にできます。

3. 「志」は面接で引き出すもの

志やキャリア観は、最初から完成している学生ばかりではありません。
「どんな獣医師になりたいか、まだ迷っている」学生にも、「どんな症例に興味がある?」「実習で印象に残ったことは?」と問いかけることで、その人なりの軸が見えてきます。

4. 若手獣医師の声を届ける

学生にとって最も信頼できる情報源は、年の近い先輩の本音です。
見学時に若手獣医師と話す時間をつくるだけで、条件の数字以上に「ここで働く自分」をイメージしてもらえます。

まとめ:「条件」と「志」は対立しない

採用担当は「志の高い学生」を求め、学生は「働き続けられる環境」を求めている。
一見すると正反対に見えますが、根っこにある願いは同じです。
それは「長く、いきいきと獣医師として活躍してほしい/したい」ということ。

学生は、条件を聞く理由と成長への関心を言葉にして伝える。
病院は、条件を先に開示し、教育とキャリアの道筋を具体的に見せる。
お互いが一歩ずつ歩み寄るだけで、就活のすれ違いはずっと小さくなるはずです。

Pettie獣医師キャリアでは、これからもVCESなどのイベントを通じて全国の獣医大学を回り、学生と動物病院の双方の声を届けていきます。

獣医学生の方へ
求人票だけではわからない病院の教育体制や働き方を知りたい方は、ぜひPettie獣医師キャリアの求人・口コミ情報やPettie獣医大学の就活コラムをご覧ください。
動物病院の採用担当の方へ
自院の教育体制や魅力を学生に伝える方法や人材確保・求人広告等にお悩みなら、お気軽にご相談ください。
お問い合わせはこちら

記事一覧へ戻る