獣医師の職域2022.02.03

公務員獣医師とは?民間の獣医との違いや仕事内容について紹介

公務員獣医師とは、その名の通り公務員として獣医の仕事に従事する医師のことを言います。通常の公務員と同様に「国家公務員」「地方公務員」に大別されます。本記事は公務員獣医師と民間の獣医師の違い、なり方などについてご紹介します。

目次

  1. 公務員獣医師の仕事内容
  2. 公務員獣医師の待遇と展望
  3. 公務員獣医師の魅力
  4. 公務員獣医師のなり方
  5. まとめ

公務員獣医師の仕事内容

1-1.国家公務員獣医師の場合

国家公務員として働く場合「農林水産省」「厚生労働省」のどちらかに入省します。それぞれの省庁で仕事内容が異なります。いずれも行政職としての関わり方になります。

・農林水産省
農林水産省の職員の場合、主な仕事は家畜衛生、品質・安全確保になります。
動物・畜産物の輸入時の衛生条件の設定、国内の家畜防疫に関する企画・調整・指導や、対日輸出施設の査察、動物医薬品の品質・安全性の確保施策などに関する国内外の情報を収集し、それに基づいて畜産物の品質向上や安全性向上を目的として施策を企画・実行していきます。

・厚生労働省
厚生労働省の職員の場合、主な仕事は食品安全性の規格の設定、人獣共通の感染症に対する対策の施策立案・実行です。
食中毒の対策や食品の輸出入、また感染症対策までを請け負います。狂犬病や鳥インフルエンザのような感染症を防ぐための仕事なども対応範囲になります。

1-2.地方公務員の場合

地方公務員の場合、「公衆衛生獣医師」として働くケースと「家畜衛生獣医師」として働くケースの2つに大別されます。

・公衆衛生獣医師
獣医師でないとできない業務として、と畜検査員、食鳥検査員、狂犬病予防員、動物愛護担当職員があります。動物に関する専門職員として、所属する地域の公衆衛生を維持・向上させることを目的として従事することになります。
動物の愛護に関する業務などは、迷い犬等の保護や致死処分の頭数は年々減少しており、む返還や譲渡など動物愛護に関する業務量が増加している現状があります。

・家畜衛生獣医師
家畜伝染病の発生予防や、農家に対する家畜衛生管理・自主防疫の助言などをおこないます。家畜の専門家として、所属する地域の生産物の安全性を向上させる活動や研究に従事することとなります。

公務員獣医師の待遇と展望

2-1. 国家公務員獣医師の待遇と展望

国家公務員給与表行政職 (一)に従ったものとなります。獣医師資格に対する手当は発生しません。
年収のイメージとしては30代で約500万円、40代で600万円~700万円程になります。
総合職で階級が上がっていった場合には年収1000万円以上(事務次官は約2000万円)にもなります。
国家公務員は全体の募集人数自体が非常に少ないため、狭き門をくぐらなければなりません。(令和2年の農林水産省の募集要項では「動物医薬品検査所」及び「動物検疫所」の募集人数は25名です。)

今後の展望としてはBSE、鳥インフルエンザなどの疫病発生により、家畜衛生行政、獣医公衆衛生行政、食品安全行政における獣医師の役割は増大していくことが予想されます。それに伴い、これらの分野の組織も拡充され獣医職の職員の待遇よくなることが見込まれます。

2-2. 地方公務員獣医師の待遇と展望

地方公務員獣医師の給与は自治体ごとに設定されています。基本的には事務職の給与表をもとに支給されますが、自治体によっては獣医師資格手当が設けられているケースもあります。
募集自体は自治体ごとに異なるため一概には言えませんが、欠員の補充での募集も行われているため、転職を考えている方は自治体の求人情報を定期的に確認するようにしましょう。
40歳で月収40万円くらいが目安の給与となります。

公務員獣医師の魅力

上述の通り、民間の獣医師と公務員獣医師とでは業務内容が大きく異なってきます。民間の獣医師の場合、主に地域に根ざして動物の診療にあたるのに対し、公務員獣医師はより上流の部分、公衆衛生や行政に関わり、国や都道府県の業務に関わります。

一番のやりがいは自らが行った調査・研究によって国や所属地域の安全の向上に繋がることでしょう。またそれに伴い、各国への海外勤務や、国際機関への出向機会などもあり自らのキャリアの大きな糧になるでしょう。
国内でも、国の研究機関における研修制度などもあり、スキルアップも可能です。
また休暇制度としても充実しており、育児休暇(男女とも3歳まで)も整備されているため、仕事への復帰もしやすい環境です。また育児休暇後は小学校入学まで部分休暇の取得も可能なため、ライフステージに合った働き方ができます。

このように民間の獣医師とは異なった魅力があります。自分が仕事に何を求めるかを考え、自らの指向にあったキャリアを選ぶようにしましょう。

公務員獣医師のなり方

4-1. 国家公務員の場合
国家公務員Ⅰ種試験に準ずる試験が行われます。そのため大半は新卒者となります。筆記試験の合格者の中から面接を行い採用者が決定されます。
「獣医職」で入省すると就けるポストが限られるという背景もあり、獣医師でも「農学」「理工」などの試験区分で入省できる可能性があります。

4-2. 地方公務員の場合
自治体によって異なるため、一概には言えませんが筆記試験や論文、面接等に寄る選考が行われるケースが多いです。採用年齢なども自治体によって定められるため、様々です。欠員が発生した場合は都度募集がかかります。
公務員獣医師が不足している傾向にあるため、全国的に採用年齢が撤廃されたり引き上げされています。動物病院からの転職者のケースも数多くあります。

まとめ

本記事では公務員獣医師の仕事内容や魅力などをお伝えしてきました。民間の動物病院とは仕事内容が大きく異なり、より上段の仕事を行いたい人などが動物病院から転職するケースが多いようです。
民間、公務員、それぞれに魅力や大変なポイントはありますが、自分のキャリアを考えたときにどのようなスキルが必要なのかを考え、最適なキャリアパスを選びましょう。

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