獣医師の職域2024.12.23
動物園・水族館で獣医師として働くには。
公益社団法人日本動物園水族館協会(JAZA)の調査では、2024年11月7日現在、同協会には動物園89、水族館50の計139カ所の施設が加盟しています。国内には非加盟の施設もあるので、実際にはもう少し数が多いと考えられます。
これらの施設には、飼育動物の治療や健康管理を行うため獣医師も働いています。この記事では、施設で働く獣医師の仕事内容、就職状況などを解説します。
動物園・水族館に勤務する獣医師の仕事
まずは、獣医師の仕事内容を紹介します。
動物の診察、治療、体調管理
飼育員と協力して、調子の悪い動物の診察や治療を行います。多種多様な動物がいるので、幅広い知識が必要になります。
動物園や水族館の動物はペットではなく展示動物なので基本的に人に慣れていません。動物が本気で立ち向かってきたら飼育員や獣医師に危険が及ぶ可能性もあります。そのため、大人数で保定したり、危険な動物の治療には麻酔銃を使ったりと大掛かりな手術が必要な場面もあります。
調査・研究
動物園や水族館の動物の中には、動物の生態や、飼育方法、治療方法・繁殖方法が確立されていない動物もいます。普段の仕事を通して研究や調査を行い、論文を書いたり、学会で発表します。
また、動物園や水族館の役割として「種の保存」があります。種の保存とは、動物が絶滅しないように人為的に繁殖を助け、個体数を維持していくことです。国内や海外の動物園や水族館と協力して希小動物の保護や種の保存を行っています。
獣医師としての仕事以外にも、施設のスタッフとして餌作りや糞の掃除などもします。また、動物愛護や環境保護の教育・啓発活動のため、ポスター作りやお話会などのイベントを行うといった仕事もあります。
動物園・水族館で獣医師として働くには
動物園や水族館には、県や市町村などの自治体が運営する公立の施設と、民間の会社が運営する民間の施設があります。
公立の施設なら公務員試験に合格する
公立園の場合、獣医師試験と自治体の公務員試験に合格する必要がありますが、一般に、公立動物園や水族館がある自治体の採用試験は人気があり、倍率が高めです。
自治体に獣医師として採用されても動物園や水族館に配属されるかどうかはわかりません。配属後も、公務員には人事異動があるためずっと同じ職場に居続けるのは難しいでしょう。
民間の施設は募集を待つ
民間の施設で新たに獣医師の採用がかかる機会はあまり多くありません。ホームページの採用情報をチェックしながら、募集がかかるのを待ちましょう。
夢を叶えるためにできること
動物園や水族館の獣医師は狭き門ですが、決して叶えられない夢ではありません。
研修に参加する
多くの動物園や水族館では、獣医学生を対象に研修や学外実習を受け入れています。
筆者も大学5年生の時に1週間、動物園の学外実習に参加し、ライオンやシカなどの治療を見学したり、飼育の手伝いをしました。
実際の仕事を見る機会はとても貴重なので、積極的に参加しましょう。動物園や水族館同士は繋がりがあることも多いので、就職状況についても質問してみましょう。
学会に入会して知識をつける
大学の授業で野生動物の生態や治療を学ぶ機会は残念ながらありません。野生動物を学びたい時は、学会に入会してみましょう。
例えば、以下のような学会では、学生会員として一般会員より安い年会費で入会できるところもあります。
・日本野生動物医学会
・日本哺乳類学会
・日本鳥類学会
・日本魚類学会
会報や学会を通じて知識を得たり、自ら繋がりを作りにいったりと、夢を叶えるには積極的に行動してみることをおすすめします。
まとめ
動物園や水族館の獣医師の仕事内容、就職状況、夢を叶えるためにできることをまとめました。
・獣医師の仕事は、飼育している動物の治療、飼育、研究・調査、教育・啓発活動
・採用は狭き門で、異動や募集がかかるまで何年も待つこともある
・学外実習に参加したり、学会に入会して知識をつけておく
夢を叶えるには時間がかかるかもしれませんが、ぜひ諦めずに自分にできることを考えて実行していきましょう。