獣医師の職域2024.11.20
馬の獣医師として働くには。大学時代にしておきたいことも解説。
農林水産省が公表した「馬をめぐる情勢」によると、日本では令和4年現在、68,263頭の馬が飼育されています。これらの馬の診察や健康管理、繁殖〜生産の現場では多くの獣医師が働いています。
今回の記事では、馬の獣医師の就職先や仕事内容、給与などの待遇、馬の獣医師を目指す方が学生のうちにしておきたいことなどを紹介します。
馬の獣医師の就職先
馬の獣医師の就職先には、以下のような場所があります。
・競馬関係の団体(JRA、地方競馬)
・馬を診察している団体
・動物病院
・馬の牧場
それぞれ解説します。
競馬関係の団体
競馬を主催する団体には、JRA(中央競馬会)と地方自治体の競馬組合があります。
①JRAの獣医師
獣医師の採用には、臨床獣医職と研究職があります。
臨床獣医職の獣医師は、競走馬の診療やワクチン接種などの健康管理、伝染病の防疫業務、レース出走馬の馬体検査などを行います。
また、JRAは競走馬総合研究所や育成牧場など研究用の施設も持っています。研究職の獣医師はこれらの施設で競走馬の疾病や生産、繁殖に関わる研究をします。
レース開催日には、通常業務と別の組織のもとで、事故などに対応します。
JRAは獣医師の中では給料が高い職場(初任給約27万円)と言われていますが、希望者が多く倍率も高いです。最近5年の採用実績は毎年4人〜7人です(採用情報 | JRA 日本中央競馬会)
②地方競馬を開催する競馬組合の獣医師
地方競馬を主催している自治体は全国で14箇所あります。仕事内容は、JRAと同じくレース出走馬の診察や各種検査、健康管理をします。
給料はJRAよりは低いですが、初任給は約25万円です。
馬を診療している団体
馬を診察している団体には、農業共済(NOSAI)、北海道にある軽種馬農協(HBA)や軽種馬調教センター(BTC)があります。NOSAIは全国に支部があり、馬を診療しているかは確認が必要です。日本の馬の多くは北海道に集中しているので、北海道にある団体では多くの症例に立ち会うことができます。
動物病院
馬の臨床で開業している獣医師の多くは診療施設は持たず、診療車で往診する方法をとっています。競走馬だけでなく、イベントや施設にいる乗馬用の馬や、個人の牧場の馬などの診療に幅広く身軽に動くことができるのが開業獣医師の利点です。
馬の牧場
競走馬の生産〜育成や調教を行っている民間の牧場に就職します。調教中の馬の治療のほか、繁殖雌馬の管理や繁殖、出産などに関わります。生まれたばかりの子馬からレースを引退して繁殖のため戻ってきた馬まで、様々なステージの馬に関わることができます。
馬の獣医師になるために大学時代にしておきたいこと
馬の獣医師を目指す学生が大学時代に取り組みたいことをまとめました。
しっかり勉強して、よい成績を収めていること
馬の獣医師の就職口は非常に少なく、特に地方自治体や団体では毎年採用があるかわかりません。採用試験には専門分野の学力試験が必要なところもあります。大学時代には、しっかり勉強し、獣医学の知識を確実につけましょう。
団体や牧場が主催している研修や実習に行く
多くの馬関連施設では、獣医学生対象の実習や研修、インターンシップを行っています。実際に馬の臨床現場を見る機会はとても貴重です。繋がりを作るためにも、研修や実習には積極的に参加してください。
馬の世話ができる部活やサークルに入る
馬の診察には危険が伴います。馬の生体や扱いに慣れるため、大学に馬術部や馬を飼っているサークルがあればぜひ参加してみましょう。大学にクラブがなくても、近くに乗馬スクールや牧場など馬を飼っている施設があれば休日などに馬の世話のお手伝いをさせていただけるよう頼んでみるのもよいでしょう。
まとめ
馬の獣医師を目指している方に、馬の獣医師の就職先や待遇、採用状況などを解説しました。馬の獣医師の就職先は、JRA、競馬組合などの競馬関係の団体、NOSAIなど馬の診療団体、動物病院、牧場などがあります。採用は不定期なところも多く、馬の獣医師としての就職は狭き門ですが、大学時代からでも実習に参加するなどできることはあるので、ぜひ諦めずに取り組んでみてください。