動物病院の経営2022.04.11

動物病院で実際にあったトラブル

家族の命を預ける場所である動物病院。話すことのできない動物達を診察しますので、飼い主さんとのコミュニケーション、スタッフ同士のコミュニケーションがとても重要な場となります。
そんな動物病院ではしばしばトラブルが起こることも。
今回は、実際に動物病院であったトラブルについてお話したいと思います。

目次

  1. 動物病院で実際にあったトラブル
  2. よくあるトラブル事例(患者さん)
  3. よくあるトラブル事例(スタッフ間)
  4. トラブルを無くすには?
  5. まとめ

動物病院で実際にあったトラブル

動物病院で起こるトラブルは、どんな種類のトラブルがあるのでしょうか。
様々な獣医師から聞くのは、主に2つの対象についてです。

・患者さん(飼い主さん)とのトラブル
一番多いのは、患者さん(飼い主さん)とのトラブルでしょう。一日に何十人と患者さんが訪れる事も多い動物病院。診察の際に話を聞くのは動物本人ではなく飼い主さんである為、対人コミュニケーションにおいてのトラブルが多いようです。
飼い主さんから状態を聞き、動物を身体検査して診断を下します。病院では動物も緊張して痛みや不調を隠すことがありますので、飼い主さんからの情報はとても重要です。
しかしそりが合わなかったり上手くコミュニケーションが取れないと、良い診察ができない上に飼い主さんとしても診療への満足度が下がってしまいます。

・病院スタッフ間でのトラブル
病院スタッフ間でのトラブルも、動物病院ではよく聞くトラブル。
病院によって院内の大きさやスタッフの人数は異なりますが、同じ人と毎日同じ空間で診療を行っているためトラブルの頻度は上がるようです。
動物病院は命を扱う仕事です。スタッフ間の少しの歪みが大きなミスに繋がる可能性がありますので、改善していかなくてはいけない問題です。しかし動物病院の経営者(院長)は診察も人事も経理も、病院の全ての作業を行っています。人事に関して長けていない人も多く、スタッフ間のトラブルまで手が回らずにおざなりにしている病院も多いように感じます。

よくあるトラブル事例(患者さん)

患者さんとのトラブルで多いものは何でしょう。多いトラブルの内容を事前に知って、回避することはとても重要です。患者さんも動物病院スタッフも、こちらの例を参考にして確認・配慮を行い是非トラブルを回避してください!

・金額が高い
思っていたよりも金額が高かった。というのは動物病院で患者さんから言われることのあるトラブルです。もちろん「診察においてどんな治療を行っていくか」によって診療費は変わってきますので、診察の最初に詳細な金額をお伝えするのは難しいでしょう。特に特殊な処置や検査、手術になると、入院日数によってかなり大きく金額は変わってきます。
いくら以上になりそうなのか、いくらまでには収まりそうなのか、患者さんから獣医師へ確認することは迷惑ではありません。思っていたよりも高くて払えない!なんてことがないように、気になった場合は都度確認してくださいね。
しかし、よくある例で注意していただきたい点があります。それは、電話で症状を話されて金額を聞かれる方です。病院側も診察していない動物について不用意に病気について回答できないですし、症例数の多い避妊去勢手術やワクチンでも、その子によって検査や投薬が必要なケースもあります。初診料以外は実際に見てみないと本当にどれくらいの金額がかかるのかお話できないケースが多いので、一度受診してご相談くださいね。

・治療を勧められなかった
調べたらこんな治療もあるのに勧められなかった…とか、この治療をしなかったのでうちの子は治らなかったのではないのか…というトラブルは動物病院で多いトラブルです。
患者には、どんな病気の可能性が考えられてどんな治療を行い、どんな経過をたどる可能性がある…という流れの説明、またそのリスクや便益、代替の治療法についての説明を受け、同意して治療を行うという『インフォームド・コンセント』という権利があります。
本来獣医師は治療について様々な代替法の可能性も説明しなくてはならないのですが、コミュニケーション不足であったり知識不足であるがゆえこのような「治療を勧められなかった」というトラブルが起きてしまいます。
近年では飼い主さんもインターネットやSNSで病気についての知識を高めている方が多くいらっしゃいます。その内容については良し悪しがありますが、疑問があれば都度獣医師に確認し、疑問を解消してから治療に挑みましょう。
専門科の獣医師以外の多くの獣医師は、「内科」「外科」「整形」「外科」「循環器消化」「器眼科」「皮膚科」…等様々な科を見ています。得意な分野や苦手な分野も獣医師によって異なりますし、毎日新しい医療が誕生していますので、まだまだ知らない検査や薬、治療もたくさんあります。なかなかすべての科を完璧に診ることは難しいため、担当の獣医師と話し合っても疑問が解消されない際は専門科を設置している病院への受診もおすすめします。

・適切な治療をされなかった
治療の内容が合っていたのか?ということも、患者さんとのトラブルでは多い事例です。
もちろん全く間違った治療を行っていて症状が改善されなかった場合、獣医師の責任となりえます。しかし、同じ疾患だったとして同じ治療を行っても個体によって結果は様々なので、何が適切な治療と定めるかは難しいところです。
獣医師が行う治療の多くは投薬によってその子の【恒常性】(身体を一定に、健康に保つ力)を取り戻す手助けをしているに過ぎません。予後は治療に介入したタイミングにも関係してきますし、どうしても助けられなかったという患者さんは、多くの獣医師が苦しい経験として体験していることでしょう。
こちらの件に関しても、獣医師と患者さんのインフォームド・コンセントをしっかり行っており、お互いが信頼した関係に慣れていれば起こらないトラブルではないかと感じます。

・スタッフの対応が悪い
受付や看護師等のスタッフの対応が悪い、というトラブルもよく見られるトラブルです。
電話での対応や、思ってもいなかった瞬間を見られていた…というのは、どんな業種でもありますよね。自分の大切な家族を預ける患者さんにとっては、少しの不安も見て見ぬ振りはできないものです。業務中は常に見られていることを意識して対応する必要があります。
また、近年動物病院でも接遇セミナーなどを実施している病院もあります。患者さんにきちんとした対応を行うには、そういった教育も必要であると感じます。

よくあるトラブル事例(スタッフ間)

患者さんとのトラブルとまた少し違ったスタッフ間のトラブル。どんな物があるのでしょうか?

・給与について
スタッフ間で多いトラブルは、給与についてです。まだまだ拘束時間が多いのに薄給であることが多い動物病院。もちろん地域や病院の規模にもよりますが、日本全国的に考えると平均給与はサラリーマンに比べてとても低いのではないでしょうか。
昇給制度をきちんと定めている病院も少なく、あいまいな病院も多いので、就職時にはきちんと確認する必要があります。

・休みについて
希望の休みが全然取れない・・・というトラブルも動物病院は多いです。
希望休や急な休みにも対応できる人数がいるのかは、動物病院選びをする上でとても重要です。
休日について、定休の病院もあればシフト管理の病院もあります。自分の希望の休みが取れるのか、また有休がきちんと取れるのかなどは確認しておくべき点ですね。

・合わないスタッフがいる
そりが合わないスタッフがいる。というのは動物病院で最も多いトラブルではないでしょうか。何人か人が集まると、どうしても合わない人は1人くらい出てくるものです。また毎日閉鎖的な空間で仕事を行っているので、疲れや慣れから周りの人を気遣う余裕もなくなってきます。
少しでも気分良く仕事をするために周りの人を考え気遣いながら仕事をする・・・というのはどの職種でも同じであると思いますので、一人一人の心がけが必要ですね。

トラブルを無くすには?

以上に上げたようなトラブルをなくすには、どのような対応を行ったらよいのでしょうか?

・インフォームドコンセントをしっかりと
まず、患者さんとはインフォームド・コンセントをしっかり行うという点が挙げられます。獣医師はきちんと説明し、疑問がないように努め、患者さんも不安なことや疑問点はその都度獣医師に確認します。信頼関係が築けない獣医師に家族を任せるのは不安でしょうし、トラブルが起こる前に先生を変えたり転院することは悪くありません。

・スタッフ教育と情報共有
動物病院も対人のサービス業の一面があります。スタッフの接遇教育をきちんとおこなったり、情報共有の制度をきちんと設定するのは、患者さんとのトラブルだけでなくスタッフ間のトラブルも避けることができると考えられます。

・労働環境の整備
労働環境の整備が曖昧な動物病院は未だにとても多いため、労働時間や休み、福利厚生など労働環境を整えることはとても重要です。
人件費は動物病院においてとても大きく占める支出ですが、良い医療を提供し無駄なトラブルを避けるには一定の労働環境の整備が有用と感じます。

まとめ

今回は、動物病院で多いトラブルについて説明しました。
みなさんが実際に経験したことのあるトラブルはありましたか?トラブルは無いに越したことはありません!患者さんも獣医師も病院スタッフも、どのようなときにトラブルになりやすいのかを今一度確認して、トラブル回避しましょう。

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