動物病院の業務2022.08.23

動物病院内のホウレンソウ

社会人になるとホウレンソウという言葉を耳にするようになると思います。報告、連絡、相談のことですがこれは動物病院内でも同様です。ホウレンソウとはどのようなことなのか、その重要性について取り上げます。

目次

  1. ホウレンソウとは
  2. 動物病院内で行われるホウレンソウ
  3. ホウレンソウができていないと何が困るのか
  4. ホウレンソウを確実に行うためには
  5. まとめ

ホウレンソウとは

ホウレンソウは漢字では「報連相」と書きます。30年以上前に誕生したビジネス用語で、「報告・連絡・相談」の頭文字をとった用語です。
複数のスタッフが働く会社内で、すべての人が同じ情報を共有し一丸となって仕事を進めていくためにホウレンソウは必要です。
動物病院も同様で、ホウレンソウができていないと最悪命にかかわる事態になったり、病院の信頼が失墜するかもしれません。

では、ホウ・レン・ソウにはそれぞれどのような意味があるのか見てみましょう。

①報告
与えられた任務について、その結果や進捗状況を伝えること

②連絡
自分が得た情報や内容を、関係する人に伝えること

③相談
自分だけではよく分からないことについて、ほかに意見を求めること

動物病院で行われるホウレンソウについて具体的に見ていきましょう。

動物病院内で行われるホウレンソウ

動物病院内では様々な業務を行います。一人が全てをこなすことはまずなく、それぞれの受け持ちの場所があるはずです。受付、外来、調剤、手術、入院患者のケア、清掃、電話対応など多岐にわたります。 このように分担して受け持った業務の内容を、立場に関係なくほぼすべて把握しておく必要があります。

①報告
報告とは先に紹介した通り、頼まれた業務の結果や進捗状況を伝えることです。院内で頼まれる業務には次のようなものがあります。
・検査
・電話連絡
・片づけ
・注文
・入院管理
など、他にも多数あります。

例えば、血液検査を頼まれた時には正確に検査を行い、結果を報告しなければなりません。検査をしただけで報告しないと、依頼した人は結果がわからないまま待っていなければなりません。結果報告がなければ、治療が進まなくなってしまいます。
依頼されたことを行った後は必ず報告してください。検査だけでなく、全てのことについて報告する習慣をつけましょう。

②連絡
院内の情報、飼い主さまや取引業者、メーカー等の院外からの情報など動物病院では様々な情報が毎日入ってきます。このような情報を関係する人に伝えることを連絡と言います。
・電話の内容
・飼主、ペットの情報
・物品の発注、入荷
・入院患者の状態やケア内容
・カルテのSOAP(SOAP:主観情報、客観情報、問題点、計画)
・予約や予定(手術、ホテル、トリミングなど)
・個人の休暇や欠勤
など

1日を通して多くの情報が病院内を行きかいますが、その情報をスタッフ全員が共有しなければなりません。すべてを共有し把握するのは難しいということであれば、これを確認したらわかるという状態にしておく方が業務の流れがスムーズです。
大切な情報を知らないスタッフがいれば、業務の流れが悪くなってしまったり、飼い主さまに関する重要な情報を知らずトラブルの原因になったり、最悪ペットの命にかかわる事態になったりします。
業務にかかわることで知った情報は必ず全員が共有できるようにミーティングや引継ぎを行ったり、全員が共有できるノートやメディアを利用するなど 工夫が必要です。

③相談
経験年数に関係なく業務の中で相談しなければならないことは多く発生します。一番やってはいけないことは、相談しないで判断することです。相談すべき内容には次のようなことがあります。
・治療内容
・何かを購入するなどの決済に関すること
・物品やシステムの不具合
・人間関係のトラブル(院内、飼主さま、その他)
・業務上の問題
・退職や休職などに関係する事項
など

相談内容によっては言い出しにくいことももちろんありますが、引き延ばすことは避けるべきです。問題が大きくなってしまったり、タイムリミットが近づいて対処が難しくなる、最悪の場合は対応すらできなくなる場合があります。
動物病院の業務や信用にかかわる事柄であればなおさらです。訴訟が起きてしまったり、動物病院の存続が危ぶまれる事態に発展してしまう場合もあります。
相談は問題が起きたタイミングで行うことが、最良です。自己判断は絶対に避けてください。

ホウレンソウができていないと何が困るのか

ホウレンソウは業務を進めていくうえで欠かせないものです。院内スタッフ、取引業者、飼主さま、ペットと良好な関係を続けていくために必要な情報共有であることを先にお話ししました。では、このようなホウレンソウができていないとどのようなトラブルにつながるのでしょうか?

①情報共有不足によるトラブル
院内で共有すべき情報はたくさんあります。病院の規模によりますが、せめて同じ部署内であれば全員がもれなく情報を知っていることが重要です。知らない人が一人でもいることで、同じことを繰り返して時間をロスしたり、やり直しになってしまうこともあります。直接治療に関係することであればなおさらです。シフト制などの変則的な働き方をする病院では情報共有が難しくなるでしょう。工夫が必要です。

②意思疎通ができず人間関係がぎくしゃくする
動物病院内では役割を分担して働いていることが多く、自分が担当していない事柄については意識して知ろうとしなければ気づかないまま1日が終わる場合もあります。意思疎通がうまくいっていないと、当然知っているはずという思い込みが生じ、行き違いが起こる原因になってしまいます。

③患者様とのトラブル
動物病院に対する飼主さまのアクセスは直接来院、予約来院、電話、メールなど様々です。一度承った内容は、直接対応していないスタッフであっても把握しておかないといけません。飼主さまは一度話した内容については、病院内の誰に話しても通じると思っておられます。それにもかかわらず、話が通じない状態になってしまうと不信感につながります。

④ペットの命にかかわることも
ホウレンソウができていないことで、最も困るといってもよいことはペットの命にかかわる内容です。ペットの情報や、現在の状況、検査数値、投薬内容など病気を抱えている動物に関して知っておかなくてはならないことはたくさんあります。間違っている、伝えていないなどは最悪の場合命にかかわります。

ホウレンソウを確実に行うためには

①ホウレンソウができない原因
ホウレンソウができないという話はよく聞きますが、その理由には心理的な面や環境面の問題が隠れています。

1.心理面
検査の結果報告などは比較的やりやすいホウレンソウですが、失敗や破損などの報告は怖いと思います。故意にやったことではなくてひやひやします。
威圧的な態度の上司、人間関係がうまく構築できていない上司に対しての報告は避けたいということは、想像に難くないことです。いつも不機嫌で、話しかけにくい上司では業務はうまくいきません。厳しさと、やさしさの両面を持ち合わせる上司でありたいものです。

2.環境面
ホウレンソウの重要性、なぜしなくてはいけないのかということが分かっていない状態が考えられます。特に、社会人になりたての人は、いちいち面倒だと思いがちです。しかし、自分一人で完結できる仕事ではなく、チームのメンバーが一丸となって行うチーム医療です。情報は全員が把握し、分からないことは相談することが重要です。

②ホウレンソウを徹底するための工夫
では、どのようにすればホウレンソウが徹底されるのでしょうか?

1.1日に1回ホウレンソウができる場を設ける
適宜ホウレンソウを行うというあいまいな設定をしてしまうと、適宜のタイミングがつかめなくなることが想定されます。毎日の業務を報告する時間を決めてホウレンソウを行う場を作りましょう。特に新人の場合、忙しそうで話しかけていいのかわからないという声を聞くことがあります。
内容にもよりますが、検査結果、急ぐことについては忙しそうにしていても声をかけるなどのルールを病院ごとに作り、スタッフ全員が実行することも大切でしょう。

2.業務連絡用のツールを作る
全員が見る場所にメモを貼り、確認した人はサインを記入するというやり方でも、ホウレンソウは可能です。
しかしスタッフが多かったり、シフト制で全員がそろわない場合にはアプリなどのツールを使用しましょう。全員がインストールし、どこにいても確認できる状態にしておけば漏れがなくなります。
ツールによっては上司に直接相談できるようになっているものもありますので、直接言うのが難しい場合は利用するのもよいでしょう。大切なのは、できるだけ早く報告して解決することです。

まとめ

今回は、ホウレンソウについてお話ししました。できそうでできないのがホウレンソウです。ホウレンソウをしなさいというばかりではうまくいかないでしょう。なぜ大切なのかをしっかり説明し、1日1回でもホウレンソウの場を設けたり、ツールを利用するようにし習慣化しましょう。
上司にあたる方は、報告しやすい職場環境を作っていくことができるようにしてください。トラブルを未然に防ぐことや、最小限のトラブルで収める危機管理が上司には求められます。

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