獣医師の独立・開業2022.02.07

独立開業後に大変なこと

独立開業のスタートを切ったからには順調に売り上げを伸ばし、事業の規模も拡大していきたいと誰しもが思います。しかし、順調な時ばかりではなく苦境に立たされることがあるのも事実です。独立開業後に遭遇する大変なことについて一緒に見ていきましょう。

目次

  1. 患者数が伸びない
  2. 資金繰り
  3. 税金と福利厚生
  4. 雇用
  5. 仕事と家庭のバランス
  6. まとめ

患者数が伸びない

事業計画書を作る段階で来院者の見込みをたてます。しかし予定通りに行かないことも多く、1日の来院者がゼロの日もあるかもしれません。このような状況になるとやはり焦ります。
 開業当初は知り合いなどに声をかけるなどの対策で数回来てもらえるかもしれませんが、知り合いの来院だけでは経営は成り立ちません。また、リピートしてくださらなければ来院数は尻つぼみとなりますし、リピートがないということは不満足であったということです。
 では、患者数が増えない理由や患者数を増やしていくための対策について見ていきます。

(1)周知不足
 患者数が増えない理由の一つとして周知不足があります。 開業前に十分な周知ができていたでしょうか?「開業予定日」「院長の紹介」「近隣住民やペットショップ、ブリーダーへのあいさつ」などの種まきは十分できていましたか?「腕がある」と思っていても患者様 は病院ができることも、どのような人が開業するかも知りません。まず知ってもらいましょう。開業日の直前に内覧会を行い、病院に対して興味を持ってくださった方に自己紹介することが大切です。開業したら患者さんが来ると考えるのは甘い考えです。ペットの飼い主様にはすでにかかりつけの動物病院があるはずです。何らかの理由があり、その病院から転院してくる方が新規患者になっていきます。転院理由に応えることができなければ顧客獲得は難しいといえます。

(2)広告宣伝は注意して行う
 広く知ってもらうために宣伝する必要があります。しかし、獣医師が広告宣伝を行う際には広告規制がありますので注意してください。既存のHPの中にも広告規制に触れているものがあります。違反にならないように「獣医療広告ガイドライン」をよく確認してください。

(3)アンケート
 来院されるには何らかのきっかけがあります。何を見て来てくださったのか?ぜひアンケートをとりましょう。アンケート用紙という形式でもよいですが、問診表に「来院きっかけ」という項目を作り「看板」「ホームページ」「紹介」「その他」の様にチェックすればよいだけにした方が回答率は上がります。このアンケート結果をもとに何に注力すればよいかを考えます。

(4)既存の患者さんを大切に
 とにかく新規患者を増やすことに目を向けてしまいがちですが、既存の患者さんがリピートしてくれたり紹介してくださることをもっと大切にしましょう。紹介で来てくださる患者様は最初から良いイメージで来院されます。紹介してくださった患者さんにはノベルティをお出しするなどして多くの新規患者さんの紹介につなげましょう。

(5)耳を傾ける
 順調に患者数が伸びていったときに起こりやすいのが、待ち時間が長いのに診察が簡素で患者さんの話を聞かないケースです。これは間違いなく不満につながります。飼主さまの話の中には様々な情報が隠れています。また、無駄話に思えることもしっかり聞くことで信頼関係が出来上がります。病気にまつわること以外は必要ないと思わず耳を傾けましょう。

資金繰り

検査機器が急に壊れて購入の必要がある、経営が思わしくないなどの理由で資金繰りが厳しくなることは経営につきものです。不測の事態に備えることは経営上大切です。

(1)経営状態を毎月確認する
毎日、お金の動きをしっかり確認しましょう。入金額、出金額、残高を合わせることは基本です。定期的に税理士やコンサルタントと経営状態の評価と修正点について話し合いましょう。

(2)追加融資のタイミング
 どうしても資金繰りが上手くいかない場合は資金調達を検討します。しかしその前に不必要な出費や過剰な仕入れ、請求漏れなどがないかは確認しましょう。固定費は削減したくても削減できないことがほとんどです。固定費のウエイトは軽くしておくことをお勧めします。
どの程度の融資が必要で、毎月の返済額として問題がないかなど専門家とよく検討しましょう。融資実行までには最低1か月程度かかりますので、早めに金融機関に相談しましょう。

(3)リース・現金購入・レンタルのどれにするべきか
 高額な機器を購入する際にリース、現金購入、レンタルのいずれにするのかはしっかり検討しましょう。いずれの購入方法にしても手に入りますが、解約や売却の是非、経理処理の違いがあります。現金購入の場合は、支払い終了後自己物件になります。しかしリースの場合は支払い終了後、返却か再リースになり自己物件にはなりません。
金額が大きいものに関しては購入前にコンサルタントなど専門家に相談しましょう。

税金と福利厚生

加入しましょう。
 法定福利厚生は、「健康保険、介護保険、厚生年金保険、雇用保険、労災保険、こども・子育て拠出金」です。労災保険とこども・払う税金の種類や時期は個人事業主と法人で異なります。おおよその納税額を把握して準備するようにしましょう。また、会社であれば1人でも雇用していれば法定福利厚生については義務付けられています。概要を確認しましょう。

(1)税金
①税金を支払う準備
 おおよそどれくらいの税金を支払うようになるのかを把握するのは難しいかもしれません。予想以上の納税額になると困ります。ある程度の目安をつけるために税理士とコンタクトをとって準備しましょう。

②支払う税金の種類
1.個人事業主の場合
 支払う義務のある税金は国税と地方税に分類されます。国税は所得税、消費税、特別復興所得税です。地方税は個人住民税、個人事業税、地方消費税です。毎月の経費支払いだけでなく税金の支払いも考えながらお金を管理していきましょう。

2.法人の場合
 法人の場合も支払う義務のある税金は国税と地方税に分類されます。国税は法人税、消費税、法人特別所得税です。地方税は法人住民税、法人事業税、地方消費税です。法人の場合、税金の計算は複雑ですので、税理士などの専門家に一任するべきです。

③法人化するか個人事業主として続けるか
 法人と個人事業主、どちらが良いのでしょうか?それぞれメリットとデメリットがありますが、個人事業主としてスタートし、経営が順調になったポイントで法人化を検討するケースも多いでしょう。一般的に法人化した方が信用面、税金面などで有利になるといわれていますが、年商規模などを考えしっかり判断しましょう。

(2)福利厚生
 法定福利厚生と法定外福利厚生があります。会社の形態をとっている場合は法定福利厚生は義務で加入しなければ法律違反です。必ず子育て拠出金は全額事業者負担、その他は事業者と労働者の折半です。
 保険などの金額は給与によって変わります。

雇用

 コミュニケーションの第1歩は挨拶です。挨拶をおろそかにすると不協和音が発生します。「ほうれんそう(報告、連絡、相談)」は基本です。治療はチームで行い、個人プレーではありません。あったことや聞いたこと、今の状態などを全員が共有しないと成り立ちません。ワンマンプレーの場ではありませんから、しっかりコミュニケーションをとりましょう。
 定期的に個人面談を行い、今後のことや悩みなどをざっくばらんに話せる場を設けるのも重要です。

仕事と家庭のバランス

開業後は病院を軌道に乗せることに注力するあまりプライベートがおろそかになってしまいがちです。実はこの状態はあまり良くない状態だと考えます。家庭、仕事のどちらかにひずみが出てしまうとすべてが円満に回らなくなっていきます。
 また、既婚又は結婚を視野に入れている獣医師の場合は出産や子育てのことを考える必要があります。特に開業後の妊娠や出産は経営に影響します。子どもは授かりものですが、タイミングということを頭の片隅にはおいておきましょう。経営も子育ても途中で中断できません。休診日や診療時間の変更などを余儀なくされる場合もあります。経営の長期計画をしっかり立てて、ケースバイケースで経営をシフトできるようにしておくことも必要です。

まとめ

独立開業後に大変なことについてまとめました。開業後は治療だけでなく、経営、人事などやらなければならないことがたくさんあり、どれが欠けても経営は傾いてしまいます。一人で全部背負うのは難しいでしょう。独立開業するならばコンサルタントに頼る方法もあります。どこに頼んでよいか判らないという方は、Pettie獣医師キャリアの独立開業サービスをご活用ください。本サービスでは様々な独立開業支援企業と提携をしているため、あなたに合ったサービスの提案が可能です。お気軽にご相談をください。

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