飼い主向け2025.02.19

話題のフアイア糖鎖TPG-1、ステロイドの副作用で苦しむ犬猫を救う?

フアイア糖鎖TGP-1、ご存じの方もいらっしゃると思いますが、聞いたことがないという方もいらっしゃると思います。
最近の研究で、フアイア糖鎖TPG-1は主に「抗腫瘍」「抗炎症」「免疫調整」の作用があることが明らかになりました。
また、抗炎症や免疫抑制が必要な病気にはステロイドが用いられることが多いですが、効果がある反面、副作用も心配されています。ステロイドを投与することが多いアレルギー、免疫性疾患、さらにがんの犬猫にフアイア糖鎖TPG-1が効果があるのではということで研究が進んでいます。
この記事では、話題のフアイア糖鎖TPG-1について紹介します。

目次

  1. ステロイドは怖い?
  2. フアイア糖鎖TPG-1について
  3. どのような病気に効果が期待できるのか
  4. 抗がん剤やステロイド剤は必要ないのか?
  5. フアイア糖鎖TGP-1の利用法
  6. まとめ

ステロイドは怖い?

臨床の現場でも飼い主さまから「ステロイドは、ちょっと...」という声を聞くことが多いのではないでしょうか?ステロイドは怖い、使わない方がよいという記事もネット上にはたくさんあります。「ステロイド」とはいったい何で、その副作用にはどのようなものがあるのでしょうか。

(1)ステロイドとは


ステロイドとは、「ステロイド核」と呼ばれる構造を持つホルモンの総称です。人や動物の体内では様々なストロイドホルモンが分泌されています。一般的に薬の「ステロイド剤」は、腎臓の少し上にある副腎皮質という組織で作られる、グルココルチコイドを薬にしたものを言います。

ステロイド剤は抗炎症作用、免疫抑制作用など多くの優れた作用を持ち、安価で治療効果がありますが、使い方次第では副作用をおこします。

(2)ステロイドの副作用


ステロイド剤の副作用には次のようなものがあります。

・免疫力低下(感染症になりやすくなる)
・多飲多尿、食欲増加
・肝臓障害
・胃腸障害(嘔吐下痢、胃潰瘍など)
・クッシング症候群(副腎皮質機能亢進症)
・被毛が薄くなる
・筋肉の萎縮
・糖尿病

など

いずれもステロイドをやめることで改善できる場合もありますが、やめるだけでは改善が難しく、長期にわたり治療が必要になったり、命にかかわる場合もあります。

(3)ストロイド以外で免疫を抑制できるもの


ステロイド以外で免疫を抑制できるものには、免疫抑制剤がありますが副作用があり、ステロイドよりも高額になります。

そこで、近年、安全性が比較的高く免疫抑制作用が期待できる「フアイア糖鎖TPG-1」に注目が集まっています。

フアイア糖鎖TPG-1について

「糖鎖」という言葉は聞いたことがないという方もいらっしゃると思います。糖鎖とは何で、注目されているフアイア糖鎖TPG-1とはどのようなもので、また何を期待されているのかについて紹介します。

(1)糖鎖とは


糖鎖(Glycan)とは、ブドウ糖などの「糖」が鎖状に連なった物質で、DNA(第1の生命鎖)、タンパク質(第2の生命鎖)に次ぐ「第3の生命鎖」といわれています。

DNAはリン酸・デオキシリボース(糖)・塩基から構成され鎖のように連なったものが2重らせん構造をとっており、生命にとって必要な遺伝情報が保存されている鎖です。

タンパク質は肉のような塊のイメージがあるかもしれませんが、もともとはアミノ酸が連なった鎖状をしており、様々な立体構造をとっています。

糖鎖は細胞上に糖衣といわれる厚い層を形成し、生物の種類や臓器ごとに異なり、細胞内外の情報の往来を媒介しています。糖鎖が細胞の表面にやってくる様々な情報をチェックしていると言い換えることができるかもしれません。

糖鎖には様々な働きがあり、

・細胞の種類の識別
・細胞の保護
・血液型の決定
・細胞内外への物質の輸送
・免疫の安定、向上

などが代表です。

例えば、ウイルスや細菌などが感染した場合、このような微生物が細胞内に侵入できる経路は決まっていると言われています。どこからでも細胞内に侵入できるわけではありません。そのため、このような性質を生かして抗インフルエンザ薬をウイルスの侵入経路となる糖鎖に作用させ細胞内に効率よく薬を運ぶという、糖鎖の性質を利用した薬の開発なども行われています。

(2)フアイア糖鎖TPG-1


では、フアイア糖鎖TPG-1とはいったい何なのでしょうか?

1.フアイア

フアイアは槐(えんじゅ)の老木に生えるキノコです。フアイアは中国の古書にも登場sル生薬で、東晋時代(317年~420年)肘後備急方」に記載が見られ、明代の李時珍が書いた「本草綱目」にも登場します。そしてしばらく姿を消しました。そのフアイアが1980年代に上海癌病院(現復旦大学附属腫瘍病院)に入院していた原発性肝臓癌の患者を完治させました。この西洋医の目線からすると奇蹟のようなことに着目し、中国政府は、産官学の連携にて新薬を開発しました。そして1992年に進行性肝癌の治療薬として承認されました。この菌糸体を増殖させ、培養して、エキス化したものが現代のフアイアです。

フアイアの抗がん効果は、約1000例の肝臓癌を対象にした臨床試験で確認され、一流英文誌 GUT に2018年11月に掲載されました。そして、現在、乳癌、肺癌、大腸癌など、いくつもの臨床研究が進んでいます。副作用は大量投与時の下痢です。その他の有害事象は吐き気と嘔吐が少数例で報告されています。

2.フアイア糖鎖TPG-1

フアイアは主にがんの治療で臨床研究が進んでいますが、その中でも大きな働きをしているとして解明されたのが、「TPG-1」という成分です。TPG-1は「第3の生命鎖」と呼ばれる糖鎖の一種です。フアイア糖鎖GPT-1はフアイアから特に発見された糖鎖の名前です。

糖鎖は細胞の表面細胞の表面を覆っており、細胞間の情報伝達の役割をはたしています。免疫の安定化は、このような細胞間のコミュニケーションが重要であるとされています。TPG-1は、細胞を安定させることで免疫を整え、様々な免疫異常の症状に効果を発揮するといわれています。

詳細については、2019年にJBC(JORNAL OF BIOLOGICAL CHEMISTRY)で発表されています。この論文には様々な臨床研究の結果、フアイア抽出「糖鎖TPG-1」には、「抗腫瘍」「抗炎症」「免疫調整」の作用があることが明らかになりました。 

An immune-stimulating proteoglycan from the medicinal mushroom Huaier up-regulates NF-κB and MAPK signaling via Toll-like receptor 4
J.Biol.Chem.(2019)294(8)2628–2641
https://www.jbc.org/article/S0021-9258(20)39363-7/fulltext

どのような病気に効果が期待できるのか

フアイア抽出「糖鎖TPG-1」には、「抗腫瘍」「抗炎症」「免疫調整」の作用があることが明らかになりましたが、 具体的にはどのような病気で効果が確認されているのか紹介します。

・肝臓腫瘍
・扁平上皮癌
・線維肉腫
・口腔内メラノーマ
・アトピー性皮膚炎
・エバンス症候群
・ウイルス性鼻炎
・難治性の慢性腸症
などで、報告されています。
https://huaier-v.org/case/

今までは、がんを患うと「抗がん剤」、免疫性疾患では「ステロイド剤」「免疫抑制剤」、皮膚の痒みや慢性炎症では「ステロイド剤」が使われる場合がありました。

フアイアの併用により、ステロイドや免疫抑制剤の減量・減薬が可能になることが分かりました。さらに、フアイアは犬と猫の免疫機能を調整し、良い免疫を上げ、悪い免疫を抑えてくれる有益な成分である事が分かり始めました。うれしいことに、フアイアは副作用がほとんどなく、ほかの治療薬との併用も可能です。

さらに研究が進み、どのような病気に、どのような使い方をすればより効果のえられる治療ができるのか、早く解明されることが待ち望まれます。

抗がん剤やステロイド剤は必要ないのか?

抗がん剤やステロイド剤などが治療で用いられる病気は多く、その治療過程で「いつまで続けるのか」「体の負担にならないのか」「効いているのだろうか」「別の治療方法はないのか」など様々な疑問がわくことがあると思います。
このような思いは、飼い主さまだけでなく獣医師も常に持っています。

診断し治療を開始するときに、双方納得のいくより良い治療を目指してインフォームドコンセントが行われます。病気の種類により抗がん剤やステロイド剤、免疫抑制剤を使用するかどうかなど、治療の選択肢が複数あります。

以下は私見ですが、ここで、言及しておきたいのは抗がん剤やステロイド剤などが悪い薬というわけではないということです。
繰り返す研究の末に開発され、しっかりしたエビデンスに基づき治療に用いられても、残念ながらその副反応に苦しむことになってしまったり、期待する治療効果が得られない場合もあります。

副反応が起こる恐れがある薬を使用する場合は、必要な検査を行いながら治療を進めていきます。その検査の結果があまりよくない場合は、投薬を中止するという決断をしたり、別の薬に変更することを考えます。

治療に使用していた薬が功を奏して、良好な結果が得られている場合、急に投薬をやめるということはありません。薬を減らしたいときに、さて次はどうしようと考えます。

同じ病気でも、いつも同じ結果になるとは限りません。だからこそ、提案できる治療方法はたくさんある方が良いのではないかと思います。
その方法のひとつとして、フアイア糖鎖TGP-1に大いに期待したいと思います。

フアイア糖鎖TGP-1の利用法

様々な効果が期待できるフアイア糖鎖TGP-1ですが、2022年2月14日に株式会社HACHIから「アニミューン」という商品名で販売されました。

公式サイトか登録動物病院から購入可能です。
ご興味のある方はサイトをのぞいてみてください。

https://animmune.jp/

まとめ

今話題のフアイア糖鎖TPG-1について、紹介しました。様々な効果が期待されている糖鎖です。
終了してしまいましたが、フアイア糖鎖TPG-1の研究をさらに進めるために、
「麻布大学獣医学部研究:ステロイドの副作用で苦しむ犬猫を救う新たな治療法開発へ!」という、クラウドファンディングも行われました。
ほとんど副作用のない体に優しい治療方法として期待される、フアイア糖鎖TPG-1。
さらに研究が進み、多くの動物が元気な毎日を送ることができる日々が待ち望まれます。

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