動物病院の経営2025.09.10

【2025年最新版】最低賃金が過去最大の引き上げへ|動物病院経営にどう影響する?

2025年、全国の最低賃金が過去最大の引き上げ幅で改定される見込みです。
これにより、動物看護師やアシスタントスタッフの給与体系を見直す動物病院も増えていくと考えられます。
本記事では、獣医師・動物病院の院長向けに、最低賃金改定の概要とその実務的なインパクトをまとめました。

目次

  1. 全国平均は1,121円へ|2025年最低賃金の改定ポイント
  2. 動物病院で働くスタッフに影響するのは誰?
  3. 最低賃金を下回るとどうなる?罰則とリスク
  4. 動物看護師の給与設計は今後どう変えるべきか?
  5. 院長・経営者としてできる具体的な対応
  6. まとめ|最低賃金引き上げは「義務」であり「チャンス」

全国平均は1,121円へ|2025年最低賃金の改定ポイント

2025年度の最低賃金は、厚生労働省の中央最低賃金審議会により、全国平均で「+66円」の時給1,121円に引き上げられる方針が示されました。
これは以下のような背景によるものです。

  • 消費者物価の上昇(インフレ)
  • 実質賃金の下落傾向
  • 地域間格差の是正
  • 労働人口の確保(特に非正規人材の流出防止)

各都道府県でさらに上乗せの動きも

厚労省の目安に対し、鳥取県や島根県などでは県単位で+70円以上の上乗せ改定が議論されており、地方でも1,000円超えが標準になる時代が到来しています。

動物病院で働くスタッフに影響するのは誰?

最低賃金の引き上げによって、動物病院内で特に影響を受ける可能性が高いのは以下のような層です。

  • 動物看護師(正職・パート)
  • 受付・事務・クリーンスタッフ(パート・アルバイト)
  • 実習中・研修中の有償インターン生
  • 夜間当直・送迎・雑務など短時間勤務の補助スタッフ

一方で、獣医師の給与は最低賃金とは直接の関係が薄いですが、基本給設計の参考水準として最低賃金の上昇は意識されます。

最低賃金を下回るとどうなる?罰則とリスク

最低賃金法に基づき、地域別最低賃金を下回る賃金で雇用した場合は法令違反となります。
もし違反があった場合、

  • 労働基準監督署からの是正指導
  • 過去に遡った差額賃金の支払い命令
  • 悪質と判断された場合は罰則対象(30万円以下の罰金)

労働時間の端数処理や時給換算ミスによって、“うっかり違反”になるケースもあるため、月給制スタッフも含めた時給換算チェックは非常に重要です。

動物看護師の給与設計は今後どう変えるべきか?

動物看護師の給与水準は、これまで最低賃金+αで抑えられてきた施設も多くあります。
しかし、今後は以下の視点から待遇の再設計が求められるようになります。

① 最低賃金“ギリギリ”は人材流出の原因に

時給1,121円は、コンビニ・ドラッグストアのアルバイト水準とも重なります。
責任・技術・専門性が求められる看護職が、それ以下の評価で定着することは困難になるでしょう。

② 国家資格化以降、待遇見直しは急務

2023年度より愛玩動物看護師が国家資格となり、有資格者の採用競争が激化しています。
待遇水準が他院と比べて著しく低いと、「資格を活かせる環境に転職したい」という声が出やすくなっています。

院長・経営者としてできる具体的な対応

✔ 時給・月給の再確認を行う(特に短時間勤務スタッフ)
– 月給制でも、1時間あたりの換算額が最低賃金を下回っていないかをチェック

✔ 「時間外研修・会議」も含めた労働時間管理の徹底
– 無償扱いになっていないか、出勤簿の記録と労基法に沿った扱いを見直す

✔ 離職防止のため、給与以外の待遇も総点検
– 休憩環境、院内の人間関係、成長機会(セミナー補助など)も重要

まとめ|最低賃金引き上げは「義務」であり「チャンス」

今回の最低賃金の大幅引き上げは、動物病院にとって一見負担にも思えるかもしれません。
しかし、これは優秀な人材が安心して長く働ける環境を整えるチャンスとも言えます。
院長・経営者として、労務リスクを回避しつつ、“この病院で働き続けたい”と思える待遇設計を目指すことが、今後の採用・定着において不可欠となっていくでしょう。

関連リンク・出典

厚生労働省 最低賃金制度(公式)
日本経済新聞「最低賃金、過去最大66円引き上げへ」
厚生労働省 中央最低賃金審議会 答申概要(2025年8月)

記事一覧へ戻る