動物看護師2022.07.12

愛玩動物看護師の今後の業務内容

愛玩動物看護師国家試験の日程が2023年2月19日に決定しました。2023年 4月には愛玩動物看護師が誕生します。有資格者と無資格者の最大の違いは、行える業務内容と職業名です。
今回は、愛玩動物看護師の行える業務内容について解説します。

目次

  1. 愛玩動物看護師とは
  2. 愛玩動物とは
  3. 愛玩動物看護師のみ行える業務
  4. 有資格者、無資格者ともに可能な業務
  5. 獣医師しか行えない業務
  6. まとめ

愛玩動物看護師とは

愛玩動物看護師とは、愛玩動物看護師法の施行(令和4年5月)により誕生する新しい国家資格です。

高度化、多様化する獣医療の現場で動物看護師が行うことができる業務範囲を広げる目的で設立されました。また、高齢動物のケアや動物の栄養管理などに関する専門的な助言や指導の担い手としても活躍が期待されます。

動物介在教育や動物介在活動(高齢者施設におけるセラピー活動など)のサポートなども行います。

愛玩動物看護師になるための受験資格については以下の記事を参考にしてください。
「愛玩動物看護師になるには」

また、2020年に日本動物看護職協会がおこなった「動物看護師の勤務実態調査」によると、動物看護師の平均月収は15~20万円で、年収は200万円未満が最も多く、次いで200~240万円という結果でした。

【PDF】動物看護師の実態調査(2020年 日本動物看護職協会 実施)

国家資格化されることで、年収のアップや資格手当ての支給などが行われる可能性が高いですが、各動物病院の判断に任されている状態です。

愛玩動物とは

愛玩動物とは以下の動物を指します。愛玩動物に含まれない動物については、対象にしないのではなく愛玩動物同様の業務を行います。
・犬
・猫
・その他政令で定める動物

オウム科全種(セキセイインコ、オカメインコなど)、カエデチョウ科全種(文鳥、十姉妹 など)、アトリ科全種(カナリアなど)
注意しなければならないのは、ここに規定されていない「ウサギ」「カメ」は獣医師法第17条に規定する飼育動物に含まれていませんし、愛玩動物看護師法でも愛玩動物に含まれていません。混乱を招く状況になっていますが、規定されていない動物であっても対象として業務を行っているのが現状です。

愛玩動物看護師のみ行える業務

愛玩動物看護師法第2条第2項に業務について書かれています。診療の補助、動物の世話や看護、飼主さまに対する助言などを業務とするとありますが、詳しくみていきましょう。

①診療の補助
「診療の一環として行われる衛生上の危害を生じる恐れが少ないと認められる行為であって、獣医師の指示の下に行われるもの」
具体的には、以下の行為が認められています。
・診察や手術のサポート
・採血
・投薬(経口)
・マイクロチップの挿入
・カテーテルによる採尿
・輸液剤の注射
・検査機器を使った臨床検査
など
診断、エックス線撮影等における放射線の照射、ワクチン等、愛玩動物の身体への影響が大きい医薬品の投与等については、謝ると衛生上の危機が生じる恐れがあるため認められません。

②獣医師の指示とは
「獣医師の指示」とは「愛玩動物の病状に応じた個別具体的な指示」を基本にします。しかし、以下の場合は例外となります。

・あらかじめ獣医師により診療計画が立てられている場合
・救急救命業務として獣医師があらかじめ定めた手順書に従い心肺蘇生措置を行う場合

例えば、獣医師による診察が行われた後、継続的な診療が必要な愛玩動物に対し、獣医師が作成した診療計画に基づき、愛玩動物看護師が処置を行うことは可能です。

獣医師の指示の下とはいえ、以上にあげた内容はかなり責任を問われる内容ですし、十分な技術や知識がないと行えない業務ではないでしょうか。愛玩動物看護師を目指し、業とする方は日々の向上心が問われます。

有資格者、無資格者ともに可能な業務

① 入院動物の世話、看護
入院中の食事、ケア、入院室の清掃、体調の観察、入院動物の健康状態の管理

② 動物の愛護及び適正な飼養に関する業務
動物が健康に暮らすことができるように、フード、しつけ、美容、病気の予防など日常の飼い方のアドバイスを行います。

・動物の日常の手入れに関する指導・助言 (グルーミング、爪切り、歯磨き等)
・人と動物の共生に必要な基本的なしつけ (適切な社会化を促す為の教室の開催)
・ 動物介在教育(AAE)への支援 (小学校等を訪問し学習活動をサポート)
・ 動物介在活動(AAA)への支援 (高齢者施設等でのセラピー活動)
・ 動物飼養困難者(高齢者等)への飼育支援 (家庭訪問、電話等で飼育に関する助言)
・ 災害発生時の被災動物適正飼養の為の支援 (地方自治体との連携協力)
・ 動物のライフステージに合わせた栄養管理 (ペットショップ等での食事相談)

③その他一般業務
受付や院内清掃、薬や医薬品など消耗品の管理など

獣医師しか行えない業務

愛玩動物看護師が行える業務の範囲は広がりましたが、獣医師しか行うことができない業務があり、それを獣医師の業務独占といいます。診療は獣医師しか行うことができません。

①飼育動物の診療は獣医師しかできない(獣医師法第17条)
飼育動物とは「牛、馬、めん羊、山羊、豚、犬、猫、鶏、うずら、その他政令で定めるものとされています。
政令で定めるものとは、オウム科全種(セキセイインコ、オカメインコなど)、カエデチョウ科全種(文鳥、十姉妹など)、アトリ科全種(カナリアなど)です(獣医師法施行令第2条)。

②診療行為の例
・疾病の診断、治療
・指示書・処方せんの交付
・採血、注射、放射線照射、手術等
・鍼灸(飼育動物の疾病の診察、診断、治療を行う場合)
・飼育動物に危害を及ぼすおそれのある整体、マッサージ、 歯垢除去及び歯石除去

まとめ

愛玩動物看護師の国家資格化に伴い、愛玩動物看護師でないと行ってはいけない業務が法律で定められました。今まで以上に確かな知識を習得し研鑽することを求められるようになります。
また、国家資格を取得していない方は、行える業務はありますが愛玩動物看護師と混同するような紛らわしい職業名を名乗ることが禁じられました。獣看護師、ペット看護師なども紛らわしい職業名の一つです。現在、無資格者の職業名についてはおそらく各動物病院でも様々な候補が考えられていますが、紛らわしい名称は法律で規制されていますので注意するようにしましょう。
それぞれの立場をしっかり理解し、チーム医療の大切な一員として今まで以上の活躍を期待したいものです。

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