獣医師の待遇と展望2023.02.09

獣医師は就職しやすいのか?しにくいのか?

2月より第1回愛玩動物看護師国家試験が始まり、今後の就職に何らかの変化をもたらすと思われます。ペット数の減少や、ブリーダーを中心とする飼育環境に関する法律も変わりました。動物病院の数やペット数の推移に対して、現在の獣医師や愛玩動物看護師の求人状況はどのようになっているのでしょうか?今回は獣医師にフォーカスします。

目次

  1. 全国の獣医師の人数
  2. 獣医学部の定員と獣医師国家試験の合格者数
  3. 獣医師の就職は売り手市場?買い手市場?
  4. 今後の動向
  5. まとめ

全国の獣医師の人数

就職しやすいのかを考える前に、現在どのくらいの数の獣医師がいるのでしょうか。獣医師法第22条の基づき、獣医師の分布、就業状況、異動状況等を的確に把握するため2年に1回、届出をするように義務付けられています。

令和2年の統計によると、全国の獣医師の数は40,251名(届出をした獣医師の数)です。男性が26,845名、女性が13,406名です。

都道府県別の獣医師数の上位3都道府県を見ると以下のようになり、東京都が圧倒的に多いことがわかります。
1.東京都  4,661名
2.北海道  3,468名
3.神奈川県 2,953名

この中には公務員、学校関係者、民間団体職員、個人診療施設、その他などが含まれます。では実際に診療施設の数とそれに従事する獣医師(開設者、従業員)の数はどのくらいあるのでしょうか?

1.東京都  施設数:2,717件 獣医師数:2,663名
2.神奈川県 施設数:1,623件 獣医師数:1,583名
3.千葉県  施設数:1,083件 獣医師数:1,031名

獣医師の届け出状況(農林水産省HPより)

獣医師数、診療施設数を総合して考えると関東に集中していると言えるのではないでしょうか?

獣医学部の定員と獣医師国家試験の合格者数

獣医学部の定員数は国公立大学365名、私立大学700名、合計1065名です。
令和4年に行われた獣医師国家試験の新卒、既卒受験者の合計は1196名で合格者数は960名です。
昨年度は960名の獣医師が新たに誕生しており、毎年この人数に大きな差はありません。

獣医師の就職は売り手市場?買い手市場?

全国の獣医師の数、診療所の数などを見てきましたが実際に就職する際は、就職しやすいのでしょうか?規模の大きい動物病院の場合は複数名の獣医師募集がかかることもありますが、中小企業の場合毎年獣医師募集があるわけではなく、求人数も1名であることがほとんどです。
現在の就職状況は何を見て判断すればよいのでしょうか?
目安となるものに有効求人倍率があります。

①有効求人倍率
有効求人倍率とは、有効求人倍率とは、全国の公共職業安定所(ハローワーク)の求人および就職の状況をまとめ、厚生労働省が毎月公表する求人数の倍率です。求人数を求職者数で割ったものがこれに当たります。
求職者数より求人数が少ないと1より小さくなり、就職しにくいと考えることができます。反対に1より大きい場合は求職者数より求人数が多く、この数値が大きくなればなるほどたくさんの求人があるということになります。
しかし、職業や都道府県によって異なりますので、一般的に有効求人率はこれですと言われても、実際には少々異なります。

②獣医師の有効求人倍率
令和4年平均の有効求人倍率は1.28倍と令和3年の1.13倍、令和2年度1.04倍に比較して改善しています。

獣医師の有効求人倍率はどうなのでしょうか。
厚生労働省 職業情報提供サイトによると令和2年度は獣医師の場合1.57倍、動物看護師は1.13倍です。
令和3年の統計では、
獣医師 2.01倍(詳細はこちら
動物看護師 1.29倍(詳細はこちら
と、それぞれ伸びています。

今後の動向

有効求人倍率は職業によって変動します。例えば、建築躯体工事の有効求人倍率は12.4倍、一般事務は0.36倍と大きな差があります。
地域によっても異なり、福井県の有効求人倍率は1.94倍で全国一位、反対に神奈川県と沖縄県は全国最低で1.09倍です。

このように職業や地域によって異なります。
獣医師の有効求人倍率は令和3年度は2.01倍と高い水準です。
先に紹介したように、地域によって動物病院の数も獣医師の分布も異なります。
獣医師の届け出状況(農林水産省HPより)

有効求人倍率を見ると順調に求人が行われているように見えます。しかし、地域差があり特に地方では獣医師の人材不足に悩まされているのが実情です。
自分が就職を希望する地域には、動物病院が何件あるのかその規模はよくチェックし、就職活動に臨む方がよいでしょう。こまめに情報をチェックすることも大切です。

まとめ

今回は、有効求人倍率をもとに獣医師の就職はしやすいのか、就職難なのかについてお話ししました。有効求人倍率は平均に比較すると高めです。しかし特に動物病院の分布を考えると地域差が激しいので、求人倍率を引き上げる要因は動物病院の集中する東京、神奈川、千葉、大阪などにあるかもしれません。
いずれにしても、しっかりリサーチして求人情報を見逃さないことが大切でしょう。動物病院への転職・就職を専門にする人材紹介サイトの利用を検討するのもよいでしょう。

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