獣医師の情報発信2025.09.17

「TOEFL?IELTS?獣医師の海外挑戦に必要な英語力とリアルなハードルとは」

近年、獣医師のキャリアの選択肢に、【海外で働く】という選択肢も入ってきています。
多くの日本人獣医師が専門医資格を取得したり、活躍の場が日本だけにとどまらなくなっています。もちろん様々な壁があるのは間違いないですが、ひと昔前に比べると世界に羽ばたく獣医師が多くいることは、とても素晴らしいことだと思います。


海外に目を向けて飛び立つ目的は、もちろん臨床だけではありません。「専門医」取得を目的に海をわたる獣医師が多いのは事実ではありますが、その他にも大学院に進学し学位取得、研究者、さらに短期の研修プログラムなど、色々な選択肢や機会があります。


しかし、やはり【語学の壁:Langage barrier】はとても大きなハードルとなるのは間違いありません。言葉をしゃべれなくとも「non-verbal comunication」といわれる言葉以外の方法でコミュニケーションをとることは可能ではあるかもしれませんが、実際に働いたり、複雑なコミュニケーションをとる現場では、言葉はとても重要になってきます。特に医療現場では、状況を共有するだけではなく、自分の考えや意見をしっかり伝えることも大切になります。さらに、獣医療で使用される専門用語も覚えなければいけません。


海外に飛び立ちたいと思っているのであれば、どんなに技術が発達しても、素晴らしい翻訳機があったとしても、英語からは逃れることは出来ません。

目次

  1. 留学先の種類で求められる英語レベルは変わる
  2. 筆者が実際に提出したスコアと準備のリアル
  3. 英語が苦手でも挑戦できる?|準備すれば必ず道は開ける
  4. まとめ|獣医師の英語力は、“手段”としての訓練で十分

留学先の種類で求められる英語レベルは変わる

もちろん英語をしっかり話せることがベストではありますが、海外で留学もしくは働く場合、場所やプログラムなどによって求められる英語のレベルは変わってきます。

短期研修(1〜3ヶ月)や見学の場合

短期研修やvisiting(見学)など一時的なものであれば、プログラムなどによっては英語のテストのスコア提出がなくても参加することができます。

例えばvisitingと言われる大学などを見学する場合です。多くの場合、テストの提出は求められません。筆者も何度かvisitingをしていますが、一度も求められたことはありません。

しかし、実際に海外の獣医現場に飛び込むわけですから、ただの見学であっても、コミュニケーションがとれるだけの英語力は必要であると感じます。プログラムの中には通訳がついてるものもあるようですが、多くの場合、通訳はいません。自分でしっかり現地の方と英語を使ってコミュニケーションを取らなければなりません。

研究留学・学位取得(Master / PhD)

研究や博士(PhD)などの学位取得を目的とした留学の場合、大学によって求められる英語レベルは変わってきますが一般的には、

  • TOEFL iBT 80~100
  • IELTS 6.5~7.0



が求められることが多いと思います。

やはり、臨床現場とくらべて論文を読んだり、書いたりすることに比重が多いのでwritingやreding力は必要になってきます。ただ、もちろん他の研究者とのコミュニケーションなども大切になってくるので、しっかり自分の意見や質問を言える英語力もなければいけません。

臨床実習/インターン/レジデンシー参加

日本人が海外(ここではアメリカをさしています)のインターンやレジデントプログラムへ応募する場合、すべての大学が英語のテストのスコアを必須にしているわけではありません。これはサポートしてくれるビザの種類によります。

「就労ビザ」をサポートしてくれる場合は英語のテストのスコアは必須ではありませんが、レジデントのプログラムの中にはマスターコースとコンビネーションのプログラムがあります。イメージとしては学校に通いながら仕事をする、というイメージです。その場合は「学生ビザ」でのサポートになるので、大学の定める英語のスコアの提出が必須になってきます。この場合は上記で述べたように、学位取得の場合と同様のスコアが必須になります。

臨床現場では、より英語でのコミュニケーションが大切になってくるのは想像出来ると思います。特に患者さんと接する内科や外科などは、英語がしゃべらない、というのは大きな障壁となります。麻酔科など患者さんと接することが基本的にはない科であっても、他の科の先生たちとのdiscussionや何か起きた時に状況を伝える、など日本語ではなんなく出来ていることを英語でやらなければなりません。

また獣医療の専門用語も英語で理解していなければ、臨床現場で働くことは難しくなってきます。

筆者が実際に提出したスコアと準備のリアル

私は現在アメリカに在住しています。ちょうど1年前に専門医になるべく、まずはレジデンシ―プログラムに入るために意を決して渡米しました。

現在はResearch fellow、いわゆるポスドクという立場で大学のラボに所属しておりますが、受け入れてもらう際、英語のテストのスコアの提出が必要でした。私の場合時間がなかったのもあって、語学学習アプリを運営している「Duolingo」がテストも作成しており、現在の大学がこのテストもスコアとして認めていたので、そちらを受けて提出しました。

現在は研究のお手伝いをしながら、レジデンシ―プログラムに入り専門医を目指しております。

語学準備で使った教材・スクール・おすすめの勉強法

母親が英語が大っ嫌いで、将来は子供に苦労がないようにということで、私は小さい時から英語を習っていました。なので、英語の環境が物心着いたときからそばにあったので、あまり英語に悪いイメージはありませんでした。
ただ、自分の意思で「勉強している」のと「勉強させられている」のではまったく状況は違います。
今になってもっと昔からしっかり英語を勉強しておけばよかったな、と思っています…。

英会話スクールにもずっと通っていましたし、自分で英語の勉強もしていましたが、どちらもやはり個人的にはメリット・デメリットがあると思います。

<スクールのメリット>

  • しっかり英語が学べる
  • アウトプットがしやすい
  • 同じ目的意識を持った人とつながれる


<スクールのデメリット>

  • お金がかかる
  • グループレッスンでは発言する機会が少ない
  • 「通う」ということを継続させるモチベーション維持が難しい



私も複数のスクールに通っていましたが、やはりしっかりとした英語の先生がいるので文法などを学ぶことができますし、話す機会は探さなくとも必ずあります。しかしグループレッスンでは、これは完全に個人的な意見なのですが発言する機会が少ないと感じました。日本人の性格もあると思うのですが、一度通っていたスクールで、私は英語で機会があったら話したいのですが、やはり「私だけはなしてしまってもな…」と変に気を使ってしまって、結局モヤモヤした時間を過ごした経験があります。
そういう場合は個人レッスンがいいとは思うのですが、グループレッスンよりもコストがかかってきてしまうというデメリットがあります。

今はオンライン英会話もいっぱいあるので、好きな時間に英会話をすることができます。私も実際入会してやっていた時期があったのですが、自由に出来る分自分のモチベーションを保つのが難しく、結局私には合わなかったので辞めてしまいました。
でも、今の時代ですから、気軽に英語に触れられる機会を存分に発揮していただけたらと思います。

日本にいる時はできるだけ「英語に触れる」ということを心がけていました。もともと洋楽とアメリカドラマが好きだったので、それらを活用して毎日ドラマや音楽を楽しみながら聞くようにしていました。
他には、アウトプットが日本にいる間は難しいので、言語交換アプリを使って友達を作り、英語でのやりとりを積極的にやっていました。

あとは、「独り言」です。
これは日本にいる時はやっていなかったのですが、アメリカに来てから「英語で考える」くせをつけるようにしました。
なるべく頭のなかでも英語で考え、何か思うところがあれば簡単な文章、例えば「お水が飲みたい」などもわざと英語で声にだしてしゃべっています。
なかなか慣れるまで時間がかかるのですが、慣れるといいスピーキングの練習になります。
お金もかからないですし、恥ずかしくもないですし、おすすめです!

英語が苦手でも挑戦できる?|準備すれば必ず道は開ける

日本人は小さなころから英語に触れているにも関わらず、英語を話すことができない、と一般的に知られています。
いろんな意見はあるかと思いますが、個人的にはやはり英語学習が「受験に受かること」を目的としているからなのかなと感じます。
言語はあくまで方法であり道具です。
とはいっても、やはり「間違っていたらどうしよう」「恥ずかしい」といった気持ちがさらに邪魔をしてしまうのは事実だと思います。

私は小さな時から英語を習っていたおかげで英語や海外文化は身近にあったので、苦手意識はあまりなかったですが、自分の意思で英語の勉強をしてきたわけではないですし、海外で実際に生活したわけではなかったので、最初にアメリカに来た時はとても不安でしたし、中途半端な英語のレベルだったので、間違った英語を話すことをとても恐れている自分に気づき、nativeになろうとしていました。それが自分を追い込んでしまい、しんどい思いもしたのですが、途中で「自分はnativeじゃないし、なれない!」と開き直る瞬間がありました。

そこから肩が軽くなり楽しく学ぼうという姿勢に変えました。
友達を作ったほうが英語が上達する、と聞いたので積極的に地元の無料の英会話クラスに参加したり、洋楽やアメリカのドラマが好きだったので、それらを使って起きてる間はなるべく英語に触れるようにしたり、最近は便利なアプリがたくさんあるので、私もそのようなアプリを利用して外国人の友達を作って英語を勉強しています。
もちろんやる気がない日は人なので多々ありますが、そういう時でも5〜10分でも英語に触れるようにして、英語に少しでも触れた自分を褒めるようにしています(お恥ずかしい話ですが…)。

気づいたことは、待っているだけでは英語も上達しないということです。
海外に住んでいるからといって英語は上達しないですし、何事もそうですが「自分で動く」ことはとても大切だと思います。これは絶対必要なことだと思います。
そして、頑張りすぎないこと・背伸びをしないことです。語学を学ぶということは明日すぐにできるものではありません。そして終わりがありません。なので、なるべく完璧主義を捨てて自分の閾値を下げてあげるのはとても大切だと思います。母国語以外を勉強すること・しゃべれること自体、とてもすごいことです。

私もまだまだ英語の勉強中です。今は自分のルーティンも出来て、英語を学ぶことが生活の一部になっていますし、自分の目標もあります。成果がわかりにくく、モチベーションを維持するのが難しい時もありますが、まさしく語学学習は【継続は力なり】です。

まとめ|獣医師の英語力は、“手段”としての訓練で十分

海外への留学に必要な英語のテストのスコアは、目的によって様々です。臨床の現場で獣医師として働くならば、しっかりとした英語力が求められますし、逆に一時的な見学ならば、そこまでのスコアは必要ありません。
しかし、どんな場合であっても、コミュニケーションは必須になってきます。

英語や語学はあくまで道具です。道具は使い方を知らないと使えないので、まずはその使い方を知る必要があります。でも、すべてを最初は知らなくても、使っているうちにうまく行く方法を見つけて、結果的に自分の快適な使い方を知ることが出来ます。ただ、「誰かが教えてくれるから」と待っているだけでは絶対に道具を使うことはできません。それには「使う」という努力と継続が必要になってきます。

「怖い」という気持ちはよくわかります。でも、語学の壁を超えることでしか見ることができない景色もあります。私はそれが見たいので、まだまだ道半ばですが、自分なりに頑張って行きたいと思っています。
英語が障壁となって、海外に羽ばたくことを諦めないでください。
この記事が少しでも役に立つことを願っています。

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