獣医師の情報発信2025.11.25

獣医師の海外留学体験談|アメリカで過ごす1年

アメリカでの生活…こう聞くとインスタグラムなどで流れてくるキラキラした生活、おしゃれな恰好をしたり、パーティーに行ったり…。毎日「Happy!」な日々を想像するかと思います。
もちろん人や、場所によると思いますが、実際の筆者の生活はキラキラとはほぼ遠い生活をしています。

ここでは、実際の誇張のない筆者の生活の様子をシェアしたいと思います。
何かの、そして誰かの参考になれたら幸いです。

目次

  1. なぜ獣医師として海外留学したのか
  2. 海外留学中の1日の流れ|J1ポスドク獣医師の場合
  3. お金の問題|獣医師の海外留学は何にお金がかかる?
  4. 海外留学で大変だったこと・苦労したこと3選
  5. 海外留学で勉強になったこと・学んだこと3選
  6. よくある質問|獣医師の海外留学について
  7. まとめ

なぜ獣医師として海外留学したのか

実をいえば、小さなころから「海外で働く」ということが自分の夢でした。
途中で、獣医師になることも夢の一つになったので、自然と海外で働くことは最初から視野に入っていました。

しかし、海外で何をするのか、ということを獣医大学に入ってから考えていて、そこで「専門医」という資格を知り、これだ!という雷に打たれたような感覚になり、海外で専門医になれば、自分の「海外で働きたい」という夢も叶うじゃないか、という単純な思考に至った、というのがお恥ずかしながら事実です。

ただ海外には一度も行ったことがなく、大学5年生の時に一度カナダの留学プログラムに応募して2週間語学留学をしました。
その体験はとても貴重で、今も自分にとって大きな一歩だったなと感じます。
初めての海外で、友達ができたり、ホストマザーや周りの人に恵まれて、とても楽しい時間を過ごせました。ただ、英語に関しては、小さい時から英語に慣れていたので、適度なコミュニケーションはできたのですが、自分の英語力がもっと必要だと痛感したのもこの時です。

さらに、獣医師として働き始めて1年後に仕事をやめて、2か月またカナダに語学留学にいきました。
ここでの経験は、自分の「海外で働きたい」という思いを強くさせた気がします。

ただ、やはり年齢を重ねるごとにしがらみは増えていくので、「専門医」になることは諦めていなかったのですが、すぐに海外に飛び立つという選択は私には出来ませんでした。
もちろん、はやく行けばよかったな、と思う時は正直あります。
でも、人にはそれぞれタイミングがあるので、私はこの海外にいけなかった期間を後悔はしていません。

実際に海外に行くという選択をしたとき、私は正直あまり不安を感じていませんでした。
というか、何も考えていなかった、というのが正しいと思います。
大変申し訳ないのですが、「頑張ろう!」とかそういった気負いはありませんでした。
だからといって楽しみというわけでもなく、なかなか表現しづらい気持ちだったのを覚えています。

そしてさらに正直にいえば、アメリカには行きたくありませんでした。
銃社会であることもあって少し怖い印象があったので、海外に行く時はカナダに行きたい、とずっと思っていたのもあり、その気持ちのモヤモヤに折り合いをつけるのが少し大変だった気がします。

私の場合は急にすべての物事が動いてしまったので、あまり準備したり、情報収集をしたりする時間はなく、「行ってしまえ!」という精神で来てしまったので、そういう意味で後で諸々大変でした。
なので、もし留学を考えている方はしっかり情報収集などの準備期間をとられるべきだと思います。

海外留学中の1日の流れ|J1ポスドク獣医師の場合

筆者は現在、「ポスドク」という肩書でアメリカの大学で働いています。
ポスドクは研究者ですので、基本はフレキシブルな働き方ができます。
もちろん所属するラボや研究によると思いますので、あくまで参考程度に考えていただけるといいかと思います。
私の所属するラボでは動物病院で働くように、就業時間が明確に決まっていません。

ただし、私のいる大学では、一応大学が定める規定時間があるので、完全に「自由」ではありません。

私の主なお仕事は「研究のお手伝い」です。
メインの研究者は別にいるので、例えば、備品の確認や、患者さんから実際のサンプルを採取して実験に使用しているので、クライテリアに当てはまる候補者をカルテから探す、などがまずは日々のルーティン業務です。

実際にサンプリングが入った場合は、

  • オーナー様とお話してコンセントをとる
  • ➡アメリカは契約書や同意書がとても大切ですし、日本よりもきっちりしている印象があります。 なので「研究に協力します」というサインをいただかないとサンプリングが実施できません。

  • サンプリングのお手伝い

  • ペーパーワーク
  • ➡研究に必要な書類関係を記入したり、整理などを行っています。

時にはメインの研究者の実際の実験のお手伝いをしたりもすることがあります。

もちろん私はあくまで一例です。
所属する研究室や先生、研究によって内容もかわってきます。

お金の問題|獣医師の海外留学は何にお金がかかる?

正直、お金はかかります。お金がないと何もできないのは事実です。
お恥ずかしい話ですが、私は自分が貯金ができない人間だったので、家族が今支えてくれています(家族には足を向けて寝れません…)。
しっかり自分の夢を叶えたら、返すつもりです。

やはり夢や熱意だけでは食べていけませんし、経済力は絶対必須項目です。

解決策は正直難しいと思います。
これはビザの問題がとても大きく関わってきます。
J1ビザは一応研究者として所属しているラボからお金をもらうことは可能ですが(大学の規定やラボの状況によります)、バイトをしたり、他のところで働くことはできません。

物価がアメリカも上がってきてるので、家賃も含めてすべてがまず高いです。
外食をしない、自炊をする、不必要なものは買わない、水筒を持ち歩く、など日本でもできるような小さな積み重ねは必要だと思います。

ただ、アメリカに限らないですが、お金がないから「我慢する」のはよくないとも感じます。
みなさんはすでにご存じかと思いますが、筆者のいるアメリカでは病気やケガが一番お金を脅かします。
ですので、アメリカでは予防という、「病気にならない」ようにすることに焦点があてられています。
なので、サプリはとんでもないくらい種類があるし、市販薬もいろんな種類があります。そして運動や食生活などもストイックな人が多いです。
なので、「我慢」して病気になって、とんでもない額の金額をを払うことになっては、元もこもありません。
ですので、筆者は贅沢はできないですが、バランスを考えて食事を取るようにしていますし、適度な運動もするようにしています。

いずれにしても、綺麗ごとでは生活できないので、お金は言語と同じくらい必須です。

海外留学で大変だったこと・苦労したこと3選

①文化の違い

具体的には、考え方や価値観が違うという点です。
やはり日本では「空気を読んで」くれる人が多いので、言わなくてもやってくれる、言わなくてもわかってくれる、というのが普通ですが、こちらではまったくそういうことはありません。
「しっかり言葉にする」というのになれなくて少し戸惑いました。

②英語

これは誰しもがぶつかる問題だと思います。
私の場合は語学留学ではないので、自分で勉強する環境を見つけないと、英語を伸ばすことができないと感じました。
初めての場所なので、英語を話せる友達がいるわけでもないし、ネットが発達している今英語を話さなくても生きていくことはできるので、海外に行ったから英語がしゃべれるようになる、というのは間違いだと個人的には思っています。

なので、自分で英語を話せる場所や環境を作る、というのが最初少し大変でした。

私は人にとても恵まれていたので、コミュニティーには無料で英語のレッスンをしてくれるところがあるので(教会や図書館など)、そのような場所を利用して、どんどん友達の輪を広げていく努力はしました。
今は仲のいい友達ができて、コーヒーを飲みに行ったり、女子会をしたりなど英語を日常的に使える・勉強できる環境で生活することができるようになりました。

③外国人であり何者にもなれないこと

アメリカで、私は外国人です。マイノリティーに属します。さらに、日本では獣医師としてバリバリ働いていて、しかも獣医歴も10年以上あるのに、こちらでは「何者でもない」というのが一番つらかったです。
今だから言えますが、正直精神的に落ちる直前だったと思います。

もちろん、英語がうまくできない自分、経済的な不安などいろんな要素が作用した結果ではあるかと思うのですが、アメリカでは、いやでも自分は「日本人」なんだとつきつけられました。

海外留学で勉強になったこと・学んだこと3選

①自信をもつこと

自分と向き合う時間が増えて、自分を好きになれました。
そして、「がんばる」という閾値が下がった気がします。
たとえば、カフェで注文できた、話しかけてくれたアメリカ人に返信できた、などそういう少しのできたことに注目するようになりました。
ないものを見るとたくさんありますし、気分も落ち込んでくるので、自分の持っているものやできたことにフォーカスすることを覚えて、それが自信にもつながって来た気がします。

②はっきり言うこと

上記とかぶってしまいますが、「空気を読む」ことはしてくれません。
なので、自分の意見だけではなく、たとえば「助けてほしい」などもしっかり声にだして主張することが大切だと学びました。
言えばみんな快く助けてくれます。

③行動力の大切さ

ここも上記とオーバーラップしてしまうところがあるかもしれませんが、自分で動かないとなにもうまれません。
私の場合はほんとに誰もしらない所に来たので、一から自分のコミュニティーを作らなければならなかったのですが、何もしていなかったら友達もできなかったし、英語も上達しなかったと思います。

実際、知り合いはラボとおうちの生活だけで、特に友達や知り合いを作ろう、英語を上達させよう、などとは思っていなかったので、まったく友達も知り合いもいなかったです。
なので、行動力は外国ではとても大切だと感じましたし、自分もアメリカにきて強くなったなと感じます。

よくある質問|獣医師の海外留学について

どうやって海外留学をしたらいいですか?
これはいくらでも方法はあります。
もし獣医じゃなくても、ワーキングホリデービザをつかったり、奨学金を利用したり、自分でコンタクトをとったり、いくらでも行こうという意志があれば見つけられると思います。
英語はどうしたらいいですか?
最初の一歩を躊躇させる最大の敵は「言語の壁」であることは間違いありません。
飛び込むには勇気がいるのもわかります。
しかし、冷たく聞こえるかもしれませんが、本当に行きたいなら「どうにかするしかない」と思います。
思いっきり飛び込むか、勉強をするしか方法はないです。
勝手に寝てれば英語が話せるようになることは絶対ありません。
今は色々な方法が選べます。
さらに、言語は終わりがないため「続ける」ことが大事だと私は切に思うので、続けられるような自分の方法を選んだらいいと思います。

まとめ

服装はヒールやファンシーな服から、スウェットや、レギンス、スニーカーなどになりますし、気を付けないとすぐに太りますし、おうちはよく壊れるし(新築です)、全部適当です。

細かいことを気にしていたら生きていけない、というのが私のアメリカで生活してみて感じたことです。
しかし悪いことばかりではありません。
自分の個性を認めてくれますし、日本人であることを誇りにも思います。
外国で生活するだけで、すごいことです。
なので、もちろん人それぞれ向き不向きはありますが、一度日本を出て外国で暮らすという経験はなにものにも代えがたいものでもあります。

ぜひ少しでも考えている人は、恐れずに飛び込んでみてください。
大変なこともいっぱいありますが、日本では見えない景色をみることが出来ます。

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