獣医師の職域

獣医師が研究職になるには|国内・海外の就職先・キャリアパスを解説

「研究者」と聞くと、筆者もそうですが、真面目で頭がよくないと踏み込めないと思っている人も多いかと思います。
しかし、視点を変えてみてください。「一つの分野を深めるエキスパート」と言い換えたらどうでしょうか。
自分が興味のある分野を、とことん突き詰めていく、なかなかクールなお仕事だと思います。

今回は筆者の体験も交えながら、獣医業界では少しなじみが薄い「研究職」について考えてみましょう。

目次

  1. 獣医師が研究職を目指す前に知っておきたいこと
  2. 獣医師が研究職に就ける主な就職先|国内・海外
  3. 獣医師が研究職になるための具体的なキャリアパス
  4. まとめ

獣医師が研究職を目指す前に知っておきたいこと

「研究職」という選択肢を考えたことはありますか?
臨床獣医師とは異なるキャリアですが、獣医師だからこそ活かせる強みがあります。

臨床獣医師と研究職獣医師の違い

ほとんどの獣医師は、動物病院など実際に動物に触れる臨床獣医師に進む人が多いのではないでしょうか。

しかし、獣医師も「研究者」として研究職につくことが可能です。
働き方はまったく違います。

もちろん実験の過程で動物(いわゆる実験動物)に触れる機会はあるかと思いますが、臨床獣医師が「動物を治す」ことが目的であることと比べると、研究職の獣医師は「知識の土台」を作ることが目的となるのではないでしょうか。

例えば私たち臨床獣医師が使用する薬一つとっても、研究者たちが様々なことを明らかにしてくれたおかげで安全に使用することが出来ます。
治療が確立され私たちが動物を助けられるのも、彼らがいるからです。

正直表にでてくるような、派手な仕事ではないかもしれません。
オーナーさんから感謝される仕事でもないかもしれません。
しかし、研究者の方たちのその知識と努力、探求心が、私たちの獣医療を支えてくれていることを忘れてはいけません。
そしてそれぐらい価値のある誇れる仕事だと筆者は感じます。

研究職獣医師を選ぶメリット

研究職を選ぶことで、一番は自分の探求心を追及することができます。
何か興味のある分野がある方は選択肢の一つとして考えてみてもいいのではないでしょうか。

また、臨床の技術という面では少し遠のいてしまうかもしれませんが、例えば大学で教員をしたい、海外で専門医になりたいと考えているみなさんにとっては、研究は切ってもきれないものです。
大学の教員や海外の専門医(特に大学で働きたい場合)は「研究」が役割の一つの大きな柱になっていることが多いです。

専門医になるためにも、論文を出さなければなりませんし、日本の大学教員も昇進するには業績として発表された論文が必要になってきます。

このように関係ないようにみえて自分のキャリアによっては、「研究職」といっても研究機関やラボで働いているだけを指すわけではなく、研究に携わる可能性があるため、大きな視野で考えてみてもいいのではないでしょうか。

獣医師が研究職に就ける主な就職先|国内・海外

獣医師が研究職として就職できる場所は、大きく国内と海外に分けられます。
大学・研究機関・企業が主な就職先で、分野によっては人医療関連の機関も選択肢に入ります。

国内の主な就職先

国内の就職先としては、

  • 大学(教員)
  • 研究機関
  • 企業(製薬会社やフードメーカーなど)

が主なものになるかと思います。
獣医師は実は人医療でも働けるので、獣医関連の機関だけでなく人医療の機関も自分の分野によっては興味があれば広げてみてもいいかもしれません。

海外の主な就職先

海外の就職先も日本と同様で、

  • 大学(教員だけでなくラボでも可能)
  • 研究機関
  • 企業(製薬会社やフードメーカーなど)

が主なものとしてあげられます。
しかし、海外でこのようなポジションにつくのは日本よりもさらに至難の業です。

獣医師が研究職になるための具体的なキャリアパス

獣医師が研究職に就くためには、大学院(博士課程)の修了とPhD取得が現実的に必要です。
ここでは、研究職までの具体的なルートと、ポスドクをはじめとするポジションの実態を解説します。

研究職になるためには

まずはっきり言ってしまえば、研究者になるために特に資格や肩書は必要ないと思います。

自分で「研究」がしたいんだ、という強い気持ちがあれば、自分の興味のある分野の研究所やラボ、そして企業(製薬会社など)に就職する、ということは可能です。

しかし、実際になにも持たずにキャリアにつながるかというと、少し難しい場合が多いのも事実です。
研究職についているほとんどの人は、大学院(修士・博士課程)を修了したうえで、そのような機関に進んでいます。
やはりPhDは持っていることが必須です。
筆者も一応大学院を修了しており、PhD(博士号)を持っていますので、今のポジションにつくことができました。

実際、働きたくとも研究者としてのポジションの枠は少なく、本当の「研究職」の仕事は狭き門です。

もちろん、PhDを持っていなくても、ラボのアシスタントという形で研究に携わることは可能なことがありますし、そのようなポジションを募集していることもゼロではありません。
が、みなさんが考える研究職につくためには、ドクター(博士号/PhD)が必要です。

研究職のポジション

「ポスドク」という言葉をどこかで聞いたことがある人は多いのではないでしょうか。
日本語では「博士研究員」と呼ばれ、英語では「Postdoctal researcher/reaserch fellow」などと言われるものです。

これは、博士号を取得した後の任期つきの研究者のポジションです。

ここで「任期つき」とかきましたが、基本的にポスドクは永久に働けるわけではなく、あるプロジェクトや研究の間だけ研究員として働けるポジションです。

なので、その参加もしくは所属しているプロジェクトや研究の期間が終われば、ポスドクの役目も終わってしまいます。
もちろんこれは一時的なものですので、多くの研究者はポスドクとして経験や業績(論文が評価の対象になります)を作ったうえで、研究機関や大学、企業などの正規の研究者のポジションに進む方が多いと思います。

さきほども書きましたが、正規の機関で研究者になるのは本当に狭き門で大変です。
なので、実際なかなか希望のポジションにつけず、ポスドクを色々な機関で転々としている研究者がいるのも事実です。

海外で研究職として働くためには

筆者の肩書は「Postdoctal research fellow」です。
つまり、ポスドクという肩書を今は持っています。

筆者はアメリカにいますので、他の国については多少事情が違ってくるかとおもいますが、少なくともアメリカは、日本に比べると研究の規模が天と地ほど違います。
それだけ、研究に力をいれて発展しており、また研究者への待遇もしっかりしています。

研究に必要な資金も日本とは桁が違いますし、チャンスがいっぱいあります(昨今少しアメリカの情勢にともなって獲得しにくくなっていると聞きます)。
そういう点では、研究職を目指す優秀な若手や、素晴らしい研究者が海外に行くというのは納得です。

ポスドクのポジションもそれだけあり、もちろんマイナーな業界はアメリカでもなかなか難しいかもしれないですが、日本にくらべると「研究者」のポジションは多い印象があります。

もし海外でポスドクをしたい場合は、ポスドクの募集に応募する方法はもちろん、自分から気になるゼミや研究者の先生にコンタクトをとって確認したり、売り込むことも一つだと筆者は思っています。
実際筆者は自分からコンタクトをしました。

また、海外で働くためにはもちろん英語は必須です。
ほとんどの機関は、海外からのポスドクに対して英語スコア提出を求める場合があるかと思います(もうすでに海外にいる、ラボのボスが英語の能力を知っているなどの場合はいらない場合もあります)。

研究者というと黙々と自分だけで実験をしているイメージがありますが、ラボミーティングだったり、自分の意見や経過を報告したり、論文を読む・書くといったことを最低限でもしなければなりません。
なので、海外で研究者を目指されている場合は、英語はしっかりコミュニケーションのツールとして勉強することをおすすめします。

まとめ

今回は、「研究職」というなかなか光があたりづらい部分についてまとめてみました。

研究者は「縁の下の力持ち」です。彼らがいるからこそ、私たち臨床獣医師が力を発揮できることを忘れてはいけません。
獣医療はチーム医療です。色んな役割の獣医師が支えあって、はじめて獣医療の発展があります。

もし研究に興味がある、もしくは追及したい分野がある方はぜひキャリアの一つとして考えてみてもいいのではないでしょうか。
この記事がお役に立てれば幸いです。

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