獣医師の働き方2022.04.04
女性獣医師の働き方
特に若い獣医師の場合、結婚や子育てなどを盛込んでライフプランを考える必要があります。
男女平等が叫ばれますが、家庭内のことについては女性へのウエイトが大きくなることは否めません。今回は女性獣医師としてのライフプランを考えてみます。
女性獣医師のライフプラン
・結婚するまで
結婚するまでは自分の時間はほぼ自由に決めることができます。この時期にできるだけ獣医師としてのキャリアアップを考えておく方がよいでしょう。学会や講習会への参加、資格取得などもこの時期にできるだけ積極的に取り組みましょう。
・結婚したら
結婚したらパートナーとしっかり話し合い、今後のライフプランを立てていくようにします。同業者であれば仕事の内容がおおよそ理解できますが、他業種や同業でも動物病院勤務でない場合は理解できないことも多くなります。勤務時間や休日の違いをお互いに把握し、家事の分担などについてあらかじめ話し合っておく方が良いでしょう。
・妊娠、子育て
妊娠・出産、子育て中は自分の都合だけで動けなくなることが多くなります。動物病院内での仕事の内容を変えなければならなかったり、勤務時間の短縮や休職、離職が必要になるでしょう。自分の体調や今後の予定などを含め、職場内でよく話し合いましょう。お互いの理解がやはり大切です。
自身が院長である場合は経営責任と患者さんへの対応が必要になります。勤務医がいる場合は産休中の業務の引継ぎを行い、勤務医がいない場合はピンチヒッターを探す必要があります。休業するならばその間の従業員の給与や支払いなどを含む資金繰りを考えます。
子育てについては後述しますが、成長の段階に合わせて変化させなければなりません。この間、思うように獣医師の仕事ができないこともあるかもしれません。その場合はワークライフバランスを見直しましょう。ライフイベントに合わせて仕事と私生活のウエイトのかけ方を変えることは業種を問わずおこります。今、重きを置くべきは何なのかをしっかり考え、気軽に聞くことができる友人や仲間がいれば悩みを相談してみましょう。
・親の介護
自分とパートナーの両親の介護が必要になった時にどのようにするのか、前もってある程度決めておいた方がよいでしょう。相談先を調べておいて、今すぐ必要というわけではなくても一度相談して知識として持っておくと安心です。
親の介護については話しにくい内容ですが、両親と老後のことについて話しておくべきです。何の知識もないままに介護が必要になると対応に困ります。お互いの今後のためにも、資産や返済などについてきちんと話し合う機会を設けましょう。
子育てとの両立
・保育園や幼稚園の問題
地域によって異なりますが、保育園や幼稚園へなかなか入園できない問題があります。特に保育園の場合はタイミングがよければ空きがあり入園できますが、空きがなければ待つか、無認可の保育園やベビーシッターに預けることを考えなければなりません。また、保育園に入園させる場合、就労証明書の提出が条件になりますので就職先を決めて書類をもらいます。延長保育がない場合は、夕方の5~6時頃迎えに行く必要がありますので、就職先に時間の相談も必要です。また、幼稚園の場合は夏休み、冬休み、春休みといった長期休暇があります。その間の子どもの預け先を考えておかなければなりません。幼稚園は保育園と異なり昼過ぎに下校になりますので、帰宅後の預け先も考えておく必要があります。
保育園、幼稚園どちらを選んでも園が休みの日や下校後のことは考えてなければなりません。出産後の就労には解決しなければならない課題がありますが、一つ一つ解決していけば両立は叶うでしょう。早目に準備をするようにしてください。
・ヘルプしてくれる人の確保
特に核家族の場合、一人で抱え込むことは禁物です。家族が増えると突発的なトラブルの数も増えますし、仕事と家庭の両立は大変です。助けてくれる人を探しておきましょう。近場に両親が住んでいて協力してもらえるなら甘えましょう。友人でもよいですが、ヘルパーさんを見つけておくことをお勧めします。少し高額になりますが、急に頼むことができますしプロフェッショナルですので安心してお願いできます。あらかじめヘルパーの会社に登録しておくと急な時にお願いできます。万が一の事態に備えておくに越したことはありません。
・急に子どもが体調不良になったら
子どもの体調不良は予測できないタイミングで起こりますし、様子を見てしまうと急激に悪化してしまう恐れがあります。仕事も大切ですが、子どものことを優先したいのが親心です。
子どもができたのちに就労するときには、まず、院長を含むスタッフ間で話し合いをしておくことが大切です。万が一子どものことで早退や欠勤をしなければならない時には、どのようにするかをあらかじめ考えておきましょう。
職場の理解
・職場の人間関係
結婚や妊娠・出産をきっかけとして、勤務日数や勤務時間の変更を余儀なくされることはよくあります。理解のある職場でスタッフ数が多く、急な欠員をカバーできる場合は受け入れてもらうことができます。しかし、最低人数で業務をこなしている場合は他のスタッフへの負担が大きくなり、溝ができてしまうこともあります。
良好な関係で勤務を続けていくためには、自分の都合の主張ではなく、自分がそうすることで業務やスタッフにどのような変化が起こるかを考える必要があります。職場に大きな負担をかけないために、どのようなことも自分だけで考えず、事前に院長やスタッフに相談しましょう。
・パート勤務
正社員で働くことが困難になった場合は、パート勤務を考えることもできます。パート募集をしている動物病院もありますので探してみましょう。パートで勤務できる病院が見つかったら、退社時間前に業務引継ぎなどの連絡をきちんとしてから帰ります。
・一時的に動物病院以外で働く
獣医師として働きたいという希望があったとしても、条件に合う病院が見つからないこともあります。そのような時には、一時的に動物病院以外で働くことも検討しましょう。異業種で働くと今までと異なる視点で仕事をとらえることができます。無駄になることは一つもありません。
親の介護
・退職
遠方に実家がある場合、親の介護が必要になり退職するケースがあります。地元に戻り、再就職するのか介護に専念するのかはケースバイケースです。退職するべきか、施設入居を選んで介護士の方にお任せするのか慎重に考えましょう。
・施設入居
介護施設に入居することを考える場合、以下の5つの入居条件があります。
①要介護度
②入居時の年齢
③必要な医療ケアの種類
④保証人、身元引受人の有無
⑤資産を含めた収入
施設にはさまざまな種類がありますので、希望すればどこでも入居できるわけではありません。詳細は市の窓口や介護施設の専門家に相談しましょう。高齢化社会になり入居希望者が多く、希望してもすぐに入居できないケースが増えています。今現在介護が必要な状態でなくても、あらかじめ調べておくことが大切でしょう。
・同居
家族と離れて暮らしていると心配事がつきません。急に連絡が取れなくなってしまうと焦ります。セキュリティ会社と契約すると、様子を見に行っていただくことが可能です。もしも可能であれば、引っ越してもらい同居したり、近場に住んでもらうことも検討しましょう。
まとめ
環境の変化は男女関係なく起こりますが、やはり公私にわたって考えると女性獣医師に起こる環境の変化の方が大きいことは否めません。結婚、妊娠・出産、子育てなど、女性には環境が変化するライフイベントがあります。あらかじめ予想を立てて準備しておくことは精神的余裕にもつながります
開業を視野に入れている方の場合は、繁忙期に出産や育児の大変な時期が重ならないように考えざるを得ないでしょう。パートナーが獣医師であるか、そうではないのかによっても動物病院の経営状態や運営は変化します。さまざまな計画を立てて慌てないようにしましょう。初めてのことは誰でも不安ですので、信頼できるコンサルタントに相談することも重要です。