獣医師の働き方2022.06.01

地方か都会か

勤務医として動物病院に就職する際や開業を考えるときに、どの地域を選ぶかは非常に大切になります。特に開業する際は地域の選択はミスができない重要ポイントです。今回は場所を決定する際のポイントについて、地方か都市に分けてお話しします。

目次

  1. 仕事をする場所
  2. 動物病院の数とペットの飼育数
  3. 都会と地方のメリットデメリット
  4. 場所を決める際の検討項目
  5. まとめ

仕事をする場所

新卒で就職した動物病院をどのように決めたか覚えていますか?求人サイトや学内にある求人企業のリストを見たり、先輩や先生方の紹介を受けたかもしれません。新卒であっても、既卒であっても、その動物病院で実際に働いてみないと実際の様子はわかりません。期待以上であったり、反対にこんな予定ではなかったとなることも往々にしてあります。

他にも、仕事をする地域によって動物病院数や診察する動物の種類、飼主の雰囲気も変わります。身近なことで例を挙げると、話し言葉もそれに含まれます。

都会はセミナーや学会が開かれる回数も地方とは桁違いに多いですが、近年はオンラインも増えましたのでこの点の差は解消されつつあります。

大学病院や二次診療の動物病院の有無も地域選択するうえで考えておく方がよいでしょう。

動物病院の数とペットの飼育数

農林水産省が発表している、「飼育動物診療施設の開設届出状況(診療施設数)」によると、全国の動物病院数の推移は次のようになります。

2021年度 12435件
2020年度 12247件
2019年度 12116件

以上のように毎年動物病院の数は増加傾向です。全国で最も動物病院が多いのは東都で、2021年度の動物病院数は1816件です。

地方別に動物病院の分布をみると以下のようになり、地域によって動物病院の数に大幅な差があることがわかります。

北海道 約4.2%(522件)
東北地方 約4.9%(612件)
関東地方 約41%(5089件)
中部地方 約15.4%(1917件)
関西地方 約17.2%(2141件)
中国地方 約5%(632件)
四国地方 約2.6%(329件)
九州地方 約9.6%(1193件)

最も動物病院数が多い東京の動物病院の割合は日本の総動物病院の14.6%に上ります。人口分布の違いもありますし、病院の規模の違いもありますので、動物病院の数だけで判断はできません。しかし、開業を考えるときには関東地方はレッドオーシャンであることを念頭に入れた方がよさそうです。

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都会と地方のメリットデメリット

では、都会と地方の動物病院のメリットやデメリットにはどのようなものがあるでしょうか?

①都会
 ・メリット
 動物病院数が多く、就職活動しやすい
 患者数が多く、様々な症例を経験できる
 学会やセミナー、勉強会が多く開催される
 専門病院や2次診療の動物病院が多い
 高度医療を提供する動物病院が多い 
 情報収集がしやすく、新しい情報が早く入手できる
 給料が高い 
・デメリット
 生活費が高い
 開業する際の競合が多い
 開業資金がかかる
 競争が激しい
 
②地方
 ・メリット
  比較的マイペースで診察可能
  開業の際の初期費用を抑えることができる
  都会に比較すると競合が少ない
  敷地を広く取りやすい
 ・デメリット
  新しい情報の入手が遅れる
  学会やセミナーの開催がほとんどない
  刺激が少なく、自己満足になる可能性がある
(メリットとしてとり上げるべきか迷いますが、寄生虫の症例は圧倒的に地方で経験することが多いと思います。寄生虫に興味がある獣医師は地方で仕事をするほうがメリットが大きいと思います。)

都会と地方のメリットとデメリットの代表的なものをリストアップしました。それぞれに長所と短所がありますので、就職や開業の際には十分に検討する必要があります。

場所を決める際の検討項目

では、実際に仕事をする場所を決める時にどのようなことを考えるべきなのかについて考えてみましょう。

まず、考えなくてはいけないことは将来の目標です。どのような獣医師を目指すのか、どのような動物病院を作り上げていきたいのかが不明瞭では自分が仕事をする場所を決めにくいのではないでしょうか。

高度医療や専門医療を行うことのできる獣医師を目指すのであれば、やはり切磋琢磨できる都会の二次診療の動物病院に身を置くべきでしょう。情報量や新しい情報が入るスピードが違いますし、競い合う競合病院が身近にあることは励みになります。

反対に、ライフワークバランスを重視していくのであれば、都会よりも地方の病院の方が仕事以外のことにも時間をとれる機会が多くなるかもしれません。

獣医学部のある都道府県の動物病院の場合、難解な症例に遭遇した際に大学病院と連携して治療を進めていくことができます。治療困難な症例を抱えた際に紹介する動物病院がない状況は、非常に苦しいです。大学病院のある都道府県で開業するメリットの一つとして検討してみるのも重要です。

開業を目指されている方は、Pettie獣医師キャリアの独立開業支援サービスからご相談をください。

誤解を防ぐために補足すると、地方であれば競い合うこともなくのんびり仕事ができるという意味ではありません。周囲に自然が多くあり、病院数、人口や飼育ペット数も都会に比べて少ない分、時間の流れがゆったりしていることは否めません。残念ながら、学会やセミナーが開催されることもほぼなく、情報収集に苦労します。都会と地方のメリットとデメリットを天秤にかけ、自分はどのように仕事をしていきたいのかをフラットな状態で考えてみましょう。

まとめ

今回は、「地方か都会か」というテーマをとり上げました。僭越ながらこの記事を書かせていただいた私が仕事場所を決めた経緯を紹介させていただきます. 私は都会で育ち、地方で獣医師の職に就いています。地方で仕事をすることを選んだ理由は様々ありますが、できるだけマイペースで仕事をし、飼い主さまと時間をとり十分にコミュニケーションをとる事のできる環境を重視したためです。もう一つの決め手は、地平線に沈みゆく夕陽があまりにもきれいで、都会では決して見ることができない光景だったからです。余談になりましたが、どこで仕事をするのかは大切な選択です。十分過ぎるくらい検討して決定して欲しいと思います。

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