獣医師の働き方2022.05.24

獣医師に向いてないかもと思った時

獣医師を続けていく中で、様々な悩みに遭遇します。治療や技術のこと、人間関係などが代表でしょう。獣医師に向いていないからやめた方がよいのかもと思うことがあるかもしれません。獣医師に向いていないと思う時にどのように乗り切るのかについて、動物病院に勤務する獣医師であることを前提としてお話しします。

目次

  1. 獣医師の倦怠期
  2. やめたい気持ちとの向き合い方
  3. 獣医師をやめたい本音
  4. 再スタートをきる場合
  5. まとめ

獣医師の倦怠期

倦怠期というと夫婦をイメージすると思うのですが、仕事にもあるのではないでしょうか。そんなはずじゃなかった、理想と違った、もっとできると思っていたなど、自分が抱いていた理想像とのギャップが原因になるかもしれません。他には、同級生や知っている人が自分よりイキイキした仕事っぷりだったり、開業したという噂を聞いたりしたときに自分の現在の立場との差に焦りを感じることもあるでしょう。

しかし、順風満帆で壁にぶつかったことがない人はおそらく皆無で、何らかの壁や挫折には遭遇します。その時、どのようにその事実をとらえるのか、次の一歩を踏み出すのかが大切です。目の前に現れたどのような問題に対しても感情的にならずできるだけ冷静に向き合うことができるようになっていきたいものです。

そのような姿勢はおそらく診療にも反映するでしょう。救急患者も、予測していなかった事態もいきなり起こります。冷静に判断する習慣はそのような場面でも生かされるのではないでしょうか。

やめたい気持ちとの向き合い方

獣医師だけでなく、社会人で仕事をやめたいと思ったことがない人の方が少ないでしょう。やめたい気持ちは段々心の中に広がっていき、いつの間にかやめたい気持ちに占領されてしまいます。
しかし、そんな時こそやめたい理由を客観的に書き出してみることをお勧めします。深く考えなくても、嫌なことや我慢ならないことを書いていくうちに自分の本音が見えてくる場合があります。上手くいかない理由や、やめてしまいたい理由は、まわりの環境ではなく意外と自分の中にあることが多いものです。

体裁を考えず紙に書き出してみましょう。殴り書きでも構いません。

感情的な判断で、自分の軸や獣医師を志した信念を曲げてしまうことは避けたいものです。
初心に帰ると言いますが、獣医師を志した理由は何だったのでしょうか。キラキラ輝くできる獣医師たちは、いきなり何でもできるようになったのでしょうか。挫折しながら、やめないで続けてきたからこそ自分が思い描いた獣医師像に近づくことができているのです。

獣医師をやめたい本音

獣医師をやめたいと思う本音は何でしょうか?
向いてないと思う根拠はどこにあるのでしょうか?
実際にやめてしまう前に、その本音ととことん向き合いましょう。困難や、壁から逃げているだけなのかもしれません。
例えば、失敗してしまったことや、自分が治せなかった症状を他の獣医師が上手く治療した。やはりこのような出来事は何年獣医師をしていても辛いです。もちろん、様々なことが獣医師をしていると起こります。確かに、卑下してしまいますし、自信喪失してしまいます。
その先に、所詮、獣医師に向いていないんだという思いが起こりかねないです。
しかし、このような理由でやめてしまうのは、苦しんでいる患者さんから逃げてしまうことです。本当に苦しんでいるのは、やめたいと逃げている獣医師ではなく24時間そばにいる飼い主さまです。そのことを忘れてはいけません。
なぜ、上手く治療に反応してくれないのか、悩みましょう。治療の方向性を考えるとともに、最初の診断が間違っていないのか、見落としがないのかを再度考えることは、案外勇気がいります。自分の治療の方向性が間違っていると認めることは勇気が必要ですが、必要なことです。
誠実に嘘をつかずに、自分と患者様に向き合うことができたときに獣医師に向いていないという気持ちと離別できるのではないでしょうか。

再スタートをきる場合

獣医師の仕事をやめても、しばらく冷却期間を置いたのちにもう一度獣医師として仕事をしたいと考える人ももちろんいるでしょう。と、同時に残念ながら絶対に獣医師には戻らないと決意する人もいます。
獣医師として再スタートをきるならば、同じことを繰り返さないためにどのようにしたらよいでしょうか。

まず、大切なことは冷却期間の間に客観的に自分自身を振り返ることです。やめたことに対して言い訳をしている限り、職場が変わっても同じことを繰り返してしまう可能性が高くなります。動物病院に勤務する獣医師として再スタートを切る場合、勤務していた頃の自分自身について振り返りましょう。得たもの、楽しかったこと。苦しかったことや解決できなかったこと。どちらが多いでしょうか?苦しいことや辛いことの方が記憶に残りやすいので、嫌な思い出がたくさん思い浮かぶかもしれません。

例えば、上手くいかなかった治療や手技について考えてみましょう。大切なことは、できなかった事実にとらわれ続けることではなくて、なぜできなかったのかを徹底的に突き詰めることです。それをきちんと行うことで、同じ場面に遭遇したときに今度こそ解決に導くことができるはずです。できないことをクリアしていくことの積み重ねが、治療に当たる獣医師の責任ではないでしょうか。

納得いかない結果を繰り返さないために、自分自身が行う日々の治療内容を必ず検証することを大事にしてください。一人の患者さまの治療について、フローチャートを作るのもよいでしょう。こうなれば、こうするという計画書です。起きうることの予測を立て、一つ一つ検証しながら治療を進めることが経験の積み重ねです。

まとめ

今回は獣医師に向かないかもと思った時について書きました。獣医師に限らず仕事をしていくうえで向いていないかもしれないと思うことはあると思います。上手くやっている他の誰かが羨ましく思える時もありますが、苦悩や見えない努力は表立って分かるものではありません。向いていないかもしれないと思った時には、そう思ってしまう理由をゆっくりで良いので考えてみましょう。可能であれば数日職場を離れ、時間をかけて自分自身と向き合ってください。楽ではない獣医師の道に一歩踏み込んだ時の思いを振り返って、ゆっくり結論を出してもよいはずです。

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