獣医師の働き方2022.05.17

フリーランス獣医師

様々な分野で働き方の多様性が言われるようになりました。獣医師の働き方も徐々に変わってきています。今回は、フリーランス獣医師について取り上げたいと思います。

目次

  1. 獣医師の働き方
  2. フリーランス獣医師とは
  3. メリットとデメリット
  4. これからの獣医師の働き方
  5. まとめ

獣医師の働き方

現在も獣医師が選択する職業には様々な分野がありますが、次の4つが代表的な獣医師の働き方ではないでしょうか。それぞれについて詳しく見ていきます。

① 臨床獣医師
臨床獣医師には大きく分けて2種類あります。一つは小動物、もう一つは産業動物です。
 小動物の臨床獣医師は犬、猫、エキゾチックアニマルの診察・治療を行います。特にエキゾチックアニマルは犬猫以外のすべての動物をさします。鳥類、爬虫類、両生類、野生動物などを含みますので動物種が莫大で全種を診察するのは困難になります。
 産業動物の中には牛、馬、豚、鶏などを含みますが、伝染病の予防や家畜の健康管理、衛生管理指導などがメインになります。

② 企業
 製薬会社、ペットフード関連会社、ペット保険会社、ペットショップ、臨床検査会社など多数の就職先があります。
 薬の開発にかかわる、フードなどの商品紹介や営業、保険請求内容に対しての調査、子犬や子猫などの健康管理や予防医療、臨床検査センターで検査や診断を行うなど多岐にわたります。

③ 研究職
 大学や研究機関で様々な研究や学生の教育にあたります。

④ 公務員
 地方公務員、国家公務員などがあります。衛生管理や予防、研究、動物に関する行政などに関わります。

フリーランス獣医師とは

①フリーランスとは
 フリーランスという言葉は最近耳にする機会が増えましたが、特定の企業や団体に所属せず、個人で仕事を請け負う働き方を言います。
 フリーランスはFree(自由)とLance(槍)を組み合わせた言葉で、中世ヨーロッパで契約して有力者に仕えた騎士を「フリーランス」と呼んだことが由来と言われています。

② 日本におけるフリーランス獣医師
 日本ではフリーランス獣医師が少しずつですが増えてきています。
 どこか特定の動物病院に所属するのではなく、1個人の獣医師として複数の動物病院と契約を結び診療を行います。
 契約を結ぶとしましたが、依頼動物病院は自分自身で探すことが前提ですので、楽ではありません。何らかのトラブルが起きた際には自分で対応することになりますので、契約書の作成などを慎重に行う必要があります。万が一の相談先も探しておくようにしましょう。

③フリーランス獣医師の仕事内容
 フリーランス獣医師の仕事内容として、どのような働き方があるのでしょうか?
・繁忙期の助っ人として
・欠員の一次的な補填
・勤務獣医師の急な休業のピンチヒッターとして
・専門診療
などがあげられます。
 動物病院に正社員やパートとして勤務するわけではないので、1週間に1回の勤務や短期間のみといった形になる場合もありますので、1つの症例を継続的に見ることはできない場合もあります。たまに来院する患者さんにとっては、新しい獣医師さんかなといった印象になりコミュニケーションが難しいこともあるかもしれません。
 しかし、たった1度の診察であったとしてもやり残しのない診療を行い、次に診察する方が分かるように細かくカルテ記入することを心がけましょう。

④海外のフリーランス獣医師
 今回はイギリスのフリーランス獣医師の例をあげてお話しします。
 イギリスではフリーランスの獣医師のことをLocum(ローカム)と言いますが、業務形態はほぼ同じです。
 契約の仕方も1日単位、期間限定など様々です。給料は自己申告制であることがほとんどなので、自己価値をつける行為は日本人にとっては難しいかもしれません。
 仕事の探し方は日本国内とおおよそ変わらないかもしれませんが、イギリスには人材紹介のエージェントが存在しますのでエージェント経由で探す方法もあります。日本でも少しずつですが、このような会社が出てきています。

メリットとデメリット

フリーランスで働く場合、どのようなメリットとデメリットがあるのでしょうか?

① メリット
まずはメリットですが、
・自由に働くことができる
・休みを自由に決めることができる
・違う動物病院を経験することができる
・収入がアップする場合がある
 フリーランスですので、自分の勤務可能な日時を申告して働きますので、休みも自由に決めることができます。自己管理が必要とも言えますが、ワークライフバランスはとりやすいと言えるでしょう。

② デメリット
 次にデメリットですが、
・仕事は自分で探さなければならない
・仕事が見つからない、または病気などで働けなくなったら収入がない
・社会保障が薄くなる
・税務処理を自己で行う必要がある
・医療事故や契約上のトラブルが起きた時の責任
 重い内容が多いですが、1個人の獣医師として仕事をする場合は個人事業主であることがほとんどです。全て自分で行うようになりますので、その責任も自身で負うこととなります。
 万が一に備えた保険などに加入できると安心です。個人事業主としてフリーランス獣医師をはじめた場合は、業務上必要とするものは必要経費として計上可能です。最初は分からないことが多く戸惑うと思いますので、専門家に相談しましょう。

これからの獣医師の働き方

 今までは企業、動物病院、研究所、公務員などが勤務形態としてよくあるケースでしたが、これからはどこかに属さない働き方も増えていくでしょう。
 しかし、場合によってはリスクを伴うこともあります。フリーランス獣医師として働く場合はそのメリット、デメリットをよく考え万全の対策をとりましょう。
 フリーランス獣医師は一般的な診療内容に関しては、最初から最後まで一人でこなせる能力が要求されます。ただし、能力以上の治療については行わないことが望ましく、契約する際に自分が間違いなく行える内容を提示することが大切です。
 できないことをできるとした場合は契約違反になる可能性があります。契約書を作成するにあたって、司法書士や弁護士の中でも動物医療に詳しい方に相談して作成するようにしましょう。

まとめ

 今回は、フリーランス獣医師についてお話ししました。今後、このような働き方をする獣医師が増えてくる可能性もあります。メリットとデメリットをよく認識して働き方を選択していきましょう。

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