獣医師の働き方2025.12.03
女性獣医師の離職率はなぜ高い?現場のリアルと後悔しない転職のコツを獣医師が解説

「このまま獣医師として働き続けられるか不安…」
そんな不安を抱えているのは、あなただけではありません。
「夜間・休日の負担が重すぎる」
「職場の人間関係に疲れた」
「結婚・出産後のキャリアが見えない」
多くの女性獣医師は、このような悩みに直面しています。
実際、女性獣医師の離職率は医師など他の職種と比較して非常に高い水準にあるという事実があります。
女性獣医師のあなたが抱える「辞めたい」という思いは、決して甘えなどではなく、能力の問題でもありません。
多くの場合、それは「環境の問題」である可能性が高いのです 。
この記事では、公的なデータと現場のリアルから、女性獣医師がなぜ離職を選ぶのか、その理由を深掘りしていきます。
そして、「獣医師を続けたい」と願うあなたが、理想の働き方を実現するための、具体的な解決策の一つとして「転職」とキャリア継続のコツを、現役獣医師の視点から解説します 。
目次
女性獣医師の離職率は高い?データと現場の認識
女性獣医師の離職率は実際に高い
農林水産省や総務省統計局の公式データ(「獣医師の需給見通しについて」「令和4年労働力調査」など)によると、20代~60代の女性獣医師の就業率は約60〜70%にとどまっています。
これは、30〜40%の女性獣医師が、獣医師の職務に就いていないことを示唆しています 。
データには「離職率」の具体的な数字は出ていませんが、一定の年次で離職する女性獣医師が多いというのは、臨床現場では共通認識として存在します。
この背景には、小動物臨床に偏ったキャリア構造の問題や、性別に関わらず物理的・精神的負担が大きい働き方が深く関わっています。
特に女性の場合には、結婚や出産・育児などライフイベントと重なる特定の年齢層で、負担が限界を超えやすい傾向が認められます。
なぜ女性獣医師は離職してしまうのか?現場のリアルから見る5つの理由
では現場の女性獣医師は、どのような理由で「もう辞めたい」と感じるのでしょうか。
主な理由を5つにまとめ、解説していきます。
①夜間・休日の負担が大きい(生活リズムと体力の問題)
獣医療の特性上、夜間対応・臨時手術による長時間勤務や、土日祝日の出勤などが避けられず、生活リズムが不規則になりがちです。
特に女性は生理(月経)や産前産後、更年期などの体調変化で肉体的負担が重くなりやすく、「続けたい気持ちはあるけど身体がついていかない」という切実な声が多く聞かれます。
また、家族との生活リズムがずれてしまうことにより、「家族と過ごす時間が減る」などの問題も多く見受けられます。
②人間関係の問題・変化しづらい院内文化
近年、女性獣医師の割合は増えていますが、人間関係の問題や古くからの院内文化による問題は根強く残っています。
命を預かる現場であるという重圧の中、「自分で勉強するべき」「長時間勤務は当たり前」といった古い慣習や文化により、「ミスが許されない」「質問が許されない」などの院内環境が残っている病院もまだ多く存在します。
このような環境は、精神的な疲弊を招き、離職の大きな引き金となり、さらに復職の妨げとなります。
③教育体制不足で自立を急かされる
- 多忙な環境と人員不足
- 多忙な環境で人員に余裕がない環境だと、教育体制が整っておらず、「相談しづらい」「怒られやすい」などの精神的負担が大きい。
- 自立を急かす環境
- 入社したばかりの春が、小動物臨床の現場では「予防シーズン」と重なり、繁忙期真っただ中となるため、即戦力を求められ自立を急かされる。
結果、十分な経験値を積む前に辞めてしまうケースも多数見受けられます。
④ワークライフバランス(結婚・妊娠・子育てとの両立)
結婚、妊娠、子育てといったライフイベントとの両立の難しさは、30代女性の離職率が特に高まる最大の要因です 。
- 産休・育休への理解に消極的な院長や組織文化。
- 産休や育休に対応できるような人員がいない職場では、「休んでいる間の人員確保」が困難で、理解が得づらく退職に繋がってしまう。
- 復帰後の働き方の選択肢(時短・パートなど)が少ない。
- 正社員での求人が多く、育児に対応できるような時間での働き方が少ない。
また、人員不足により、子供の体調不良などによる欠勤・早退などに対応できない職場が多い。 - キャリア構築の難しさ
- 6年制大学を卒業してからだと、結婚や出産のタイミングの前に十分な経験を積むことが難しい。
そのため、ブランク後に一からキャリアを築きなおさなければならない場合もある。
また、教育する側が若手である場合、「やりづらさ」が負担となることもある。
⑤キャリアパスの選択肢が少ない
獣医師という職業はどうしても「小動物臨床一択」という印象がまだまだ根強く、他の働き方があることを知らないケース、また知っていても踏み出せないケースも多くあります 。
しかし視野が広がれば、臨床以外の道を選択することで、獣医師であることを諦めずに活躍できる可能性が高いのです。
女性獣医師が「転職して良かった」と感じたポイント
一度は離職も考えたものの、思い切って転職に踏み切ることでキャリアを継続できている女性獣医師からは、こんな意見が上がっています。
- 教育制度が整った病院に移り、安心して経験を積めて成長速度が上がった。
- 夜間なし・時短勤務の環境を選び、体力的な負担が減り長く働けるようになった。
- 女性院長・女性上司の職場で、ライフイベントへの理解があり安心感が段違いだった。
- 公務員・企業獣医師といった他職域へ転職し、働きやすさと安定を得られた。
- 企業・グループ病院に転職することで福利厚生をしっかり得られる環境になった。
- 子育て中の獣医師の比率が高い職場を選んだことで、復職や子育てとの両立がスムーズだった。
- 予防医療中心の病院に転職したことで、無理なく勉強と両立できた。
離職・転職を考えている女性獣医師が“まず整理すべきこと”
「辞めたい」と感じたら、すぐに退職へ踏み出す前に、以下の3つのポイントを整理しましょう。
- 「辞めたい理由」をもう一度よく考える
- 感情的になっている部分と、構造的に解決すべき問題を分け、真の「辞めたい理由」を明確にしましょう。
(例:「夜間勤務がきつい」「人間関係が悪い」「給料が低い」など。) - 今の病院では改善できないか?
- 今の病院で、あなたの「辞めたい理由」を改善するための交渉の余地は全くないでしょうか?
(例えば、夜間勤務の免除、時短勤務の提案、部署異動など。) - 他院や他職域なら解決できる問題か?
- もし「辞めたい理由」が夜間勤務の多さや長時間勤務であれば、夜間なしの病院や時短勤務が可能な病院への転職で解決することができます。
また子育てとの両立であれば、公務員や企業獣医師など、安定した環境で解決できる可能性があります。
女性獣医師に最も向いている働き方とは?5つのキャリアタイプ別に紹介
獣医師が就ける職業は「小動物臨床一択」ではありません。
あなたのライフステージや希望に合わせて、最適なキャリアパスを見つけましょう 。
- 1. 小動物臨床
- 教育体制が整った病院や、夜間勤務・オンコールなしの病院など、自分の生活リズムにあった病院を選ぶことができれば、成長ややりがいとの両立を図れます。
- 2. 公務員(検査所・食検・家保など)
- 安定した勤務体系と、産休・育休の実績が豊富でワークライフバランスを重視する方におすすめです。
公務員試験や年齢制限もありますが、自治体によっては柔軟な対応をしているところもあります。 - 3. 産業動物臨床
- 大動物が相手なので体力は必要ですが、地域によっては休みが取りやすい場合もあり、チームでの分業体制が整っている場合があります 。
- 4. 企業系獣医師(製薬・フード関連)
- 臨床現場での仕事にこだわらなければ、土日祝日休みや、裁量の大きい働き方、安定した給与体系を得やすい環境です。
- 5. パート・時短勤務
- 特に子育てとの両立を最優先したい獣医師にとって、柔軟な働き方を実現できる選択肢です。
女性獣医師の転職成功率が上がる動物病院選びのチェックリスト
後悔しない転職をするためには、求人票だけではわからない職場のリアルを見極めることが重要です 。
- □夜間・オンコールの有無と実態
- 「夜間救急」ありと明示していなくても、時間外の診察を受ける病院もあります。 入社してから「実は・・・」とならないよう、事前の確認が必要です。
- □教育制度の具体的内容と、入職後のトレーナー体制
- 具体的な教育マニュアルが完成されているか、直属の教育係がいるか。 質問ができる環境が整っているか、またどのような経験が積めるかを確認しましょう。
- □院内ミーティングの雰囲気(心理的安全性が高いか)
- 院長や上司からの一方的な意見だけではなく、若手や女性の発言も受け入れ、それをディスカッションできる環境であるかを見極めましょう。
- □有給の消化率と、連休取得の実績
- 夏季休暇や年末年始などにまとまった休みが取れるのか、急な欠勤に対応できるのかなどは事前に確認しておきましょう。
- □産休育休の取得・復帰の実績
- 実際に産休育休制度を使用した人から、話を聞けるとなお良いでしょう。
また、ブランク後に復帰したスタッフがいれば、話を聞いてみましょう。 - □女性獣医師・スタッフの在籍状況と、年齢構成
- 子育て世代のスタッフがどのくらい在籍しているか、またスタッフの年齢層を知ることで馴染みやすい環境かどうかを知ることができます。
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- 相談だけも大歓迎です 。
- 転職を急かすことは一切ありませんので、ご安心ください 。
まとめ|“辞めたい”は甘えではなく、働き方を見直すサイン
女性獣医師の離職率が高いのは、個人の能力や資質ではなく、多くの場合「環境の問題」です 。
「辞めたい」と感じるのは、あなたが理想の働き方を求めている証拠であり、働き方を見直すサインです。あなたの努力や今までのキャリアを諦める必要はありません。
働く環境を変えることで、あなたも必ず獣医師として働き続けられるはずです。
Pettie獣医師キャリアは、獣医師の皆様が理想の環境を見つけ、後悔なくキャリアを継続できるよう全力でサポートします 。












