獣医師の転職2022.03.29

楽しく仕事を続けるために!臨床獣医師20代からのキャリアパスを考えよう

臨床獣医師の多くは、なんとなくの雰囲気で病院を選び、不満が出てくると転職をする…というキャリアを歩んでいる人が多いのではないでしょうか。楽しく充実した仕事を続けるためには、早い段階からキャリアパスを考えた病院選びを行うことが重要です。
今回は楽しく仕事を続けるために、どんな病院選びを行いどんなキャリアパスを歩んでいく必要があるのかを解説します。

目次

  1. キャリアパスとは
  2. あなたはジェネラリスト派?スペシャリスト派?
  3. 臨床獣医師がキャリア上立ち止まる3つのライフイベント
  4. 男女のキャリアパスの違い
  5. 臨床経験年数はスキルに直結しない!
  6. まとめ

キャリアパスとは

キャリアパスとは「職歴」の意味である「キャリア」と「道筋」の意味である「パス」を組み合わせた言葉です。一般的には企業で仕事を行う上で、目標とする職歴・ポストに就くまでに必要な業務経験や道筋を指します。キャリアパス制度を設定して、必要到達目標に合わせて給与や役職を設定している企業も多いです。
生涯国家資格を生かして活躍できる小動物臨床獣医師においても数年ごとに自分が到達したい目標を定めることは仕事のモチベーション向上にも繋がりやすく、キャリアパスを設定した上で仕事を行うメリットは大いにあるでしょう。
特に卒後間もない20代から将来へのキャリアパスを考え、職場選びを行うことはとても重要です。まず、大手病院・中規模病院・小規模病院によって特徴が異なりますので見ていきましょう。

①大手企業病院
大手企業病院は、この記事では全国各地に分院があったり総合病院や専門病院等を抱えている法人を指します。このような病院は法人としてしっかりとした体制が作られており、研修制度や福利厚生、キャリアパスや給与体制が明確に設定されている印象です。総合病院や専門病院ではより専門的な医療を学ぶことができるでしょう。しかし会社の方針に則って機能している分、個人の要求が通りにくかったり自分が思っていなかった配属へ配置される可能性があります。

②中規模病院
中規模病院は、この記事では一定の地域に根ざしつつ地区内において分院展開を行っている病院を指します。このような体制の病院では、本院では専門科や高度な医療を行っており、分院では予防医療から一般的な診療等を行っていることが多いです。研修制度や福利厚生が充実していたりキャリアパスの設定を行っている病院も多い印象です。設備が整っており幅広い分野で仕事ができる一方、診療件数や残業が多かったり、人が多くて思ったように経験が積めない、といった感想もよく聞きます。

③小規模病院
小規模病院は、この記事では地域に根ざした0.5〜1次診療を行い獣医師が1人〜2人の病院を指します。農林水産省の統計によると、獣医師1人〜2人の小動物診療施設は全国の約84%にもなります。新人の採用等はない病院も多いですが、地域に根ざした診療で患者様とも良い信頼関係で仕事ができたり、人が少ない分経験を積める機会は多くあるでしょう。しかし労働条件や福利厚生がきちんと設定されていなかったり、設備によって可能な診療が制限されてしまったり、病院によっては忙しくて休みがなかなか取れない…といった場合もあります。

あなたはジェネラリスト派?スペシャリスト派?

キャリアパスを設定する上で、将来ジェネラリストを目標とするのかスペシャリストを目標にするのかによって大きく道筋は変わってきます。

①ジェネラリストとは
広範囲に渡る知識や経験を持ち診療を行う、主に「総合診療獣医師」のこと。医師とは異なり専門科に分かれることが少ない獣医師は、多くの場合こちらに当てはまります。
勤務した病院によって診療スタイルの差があり、個人の診療スキルは大きく異なってしまうと感じます。そのためきちんとキャリアパスを設定して、一つ一つ目標をこなしていくとスキルの差は最小限にできるのではないでしょうか。

②スペシャリストとは
特定の分野において専門的な知識を用いて診療する、主に「専科獣医師」のこと。大学病院や総合病院、専門科病院では専門医が活躍することが多いです。専門医になるには数年の総合診療経験ののち、論文を執筆して専門医試験に受かる必要がありますので、一定の診療スキルを持った人のみが専門医を名乗れます。キャリアパスを明確に設定して、専門医取得までに必要なことを行っていく必要があります。

③進みたい分野で大きく変わるキャリアパス
ジェネラリストとスペシャリスト、将来どちらの道へ進んでいきたいかによって、働く環境を検討する必要があります。どちらも一定以上の一般診療スキルは求められますので、皆初めは総合診療から経験を積むのが一般的です。特にスペシャリストになるには専門科の診療経験が求められますので、専門科がある病院を選んだほうが道は早いでしょう。

臨床獣医師がキャリア上立ち止まる3つのライフイベント

小動物臨床獣医師はキャリアを積む上で誰もが一度考えて、立ち止まるライフイベントがあります。一つずつ考えて行きましょう。

①新卒就職時
卒後最初の就職先選びは今後のキャリアを考える上でとても重要です。どんな獣医師になりたいのか、何年後にどんな経験を積んでいたいのか、数年後には転職を考えているのか…等、今後のキャリアを考えて病院選びを行う必要があります。
もちろん数年働いてみてキャリアを考え直し、方向転換していく獣医師もとても多いです。しかしすぐに転職してしまうとなかなか基礎が身につきませんので、卒後すぐの病院は一定期間働き続けてきちんと基礎を学べるような病院選びを行うことをおすすめします。

②結婚出産時
結婚や出産のイベントは、このままの給与・勤務体制で良いのかを考える獣医師がとても多い時期です。キャリア的にも一般的な診療を一通りこなせるようになり1人で活躍し始めるのもこの頃でしょう。ライフスタイルの変化とともに働き方を考える機会になります。ライフワークバランスを保つために産休・育休制度がある病院や福利厚生が充実した病院を選ぶ事は大切です。

③勤務医か開業か
勤務医を続けて7〜8年目になると大体の人がある程度自分一人で診療をすすめるようになり、この先勤務医を続けるのか?開業をするのか?と自分のキャリアを考えるようになります。
キャリアパスを設定する上で、自由に自分の思ったとおりの診療ができる開業を目標にする方も多いですが、開業には多くの自己資金やリスクが伴います。勤務医でも分院院長等の働き方もありますので、大手・中型病院でキャリアを積んで分院を任せてもらうというのも一つの働き方になります。

男女のキャリアパスの違い

近年男女間で仕事格差はほとんどなくなって来ています。獣医師も30年前は女性2割男性8割の職業でしたが、現在の男女比はほぼ5:5です。しかし女性の場合結婚・出産・育児等でどうしても自身の置かれる環境が変化し、就業形態が変化することがあります。そのためキャリアパスが設定しづらく、キャリアパスに沿った仕事ができなくなる可能性が高いのです。
前述した通り以前は圧倒的に男性の比率が多かった獣医師という職業なので、現時点でもどのように女性がキャリアを積んでいく事が良いのか明確な道筋がありません。ライフイベントに伴って働きづらくなり、臨床の現場を離れてしまう女性も多いです。そうならないように、女性の場合は特に自身のキャリアパスとライフイベントを一緒に考え、柔軟に対応してくれるような病院選びをすることがより大切であると感じます。

臨床経験年数はスキルに直結しない!

一般的に臨床経験年数でどれくらいのスキルを持っているのかを予測します。しかし経験年数に対して低スキルである獣医師も多いため、しっかりとキャリアパスを設定して年次ごとの到達目標をクリアしていく事は自身のアピールにもなります。

①実は臨床経験3年目〜がつまづきやすい
臨床歴1−2年目は一通りの検査や簡単な診察ができるようになり、3年目には一通りの診察が自身をもってできる頃でしょう。この頃多くの人が今の病院のままで経験を積んでいけるのか?とモチベーションが低下し転職を考えるようになります。しかし実際に経験年数がある獣医師からするとまだまだ…ということが多いようです。こんなときに、自身のキャリアを迷わないためにもキャリアパスを設定する事は重要です。本当にできているのか?今後のために必要な事はなにか?この病院でできないことはなにか?一度立ち止まって考えてみましょう。

②年次ごとにステップアップでモチベーション強化
年次ごとにステップアップしていくようなキャリアパスを設定するのは、仕事へのモチベーションを保つためにも重要です。1年ごとに詳しく設定するのが良いでしょう。キャリアパスを設定している病院もありますが、基準がない病院もあります。そんな場合は院長や上司と相談して年次ごとの到達目標を決め、少しづつ任せてもらえる仕事を増やしていくと良いでしょう。

まとめ

臨床獣医師を続けていく上で卒後早い段階からのキャリアパスの設定はとても重要です。
楽しく仕事を続けるためにはスキルの向上はもちろん、ライフイベントに伴って柔軟に対応していくことも大切ですので病院選びは慎重に行いましょう。

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