獣医師の転職2022.05.09

転職するならどんな動物病院を選べばよいか

獣医師として仕事をしていく中で転職を考える機会があると思います。転職を希望する理由にはさまざまありますが、理由にかかわらず「転職目的」「転職後の目標」を明確にしないと、転職しても大きな変化は望めないでしょう。今回は獣医師が転職する理由や、転職して目指すものについてお話しします。

目次

  1. 転職理由
  2. どのような病院に転職したいのか検討する
  3. 転院する目的を明確に
  4. 転職するならどんな病院が理想なのか
  5. まとめ

転職理由

まず、転職理由としてよくあげられるものに以下の理由があります。人間関係の問題もあると思いますが、今回は省略します。
それぞれの理由について詳しくみていきます。

①給料が低い
 厚生労働省の賃金構造基本統計調査によると30歳代の獣医師の平均年収は約570万円です。もちろん勤務年数が長くなり、スキルアップすれば年収は高くなりますが、勤務時間や労働内容、責任などを考慮すると勤務内容と年収が見合わないと感じることも否めません。

②スキルアップを図りたい
 新卒の場合はさまざまな症例の診察ができることを目標にすることがほとんどです。しかし、勤務年数が増えるにつれこの診療科目を極めたいとか手術の腕を磨きたいと思うようになることは自然です。現在の勤務先でその希望がかなう場合は別として、他の動物病院の方がその分野では優れているのであれば転職し技術や知識を習得する方が効率的でしょう。

③転居、結婚、子育てなどのライフイベント
 家庭の都合や結婚、子育てなどでの都合で転職することは誰にでも起こりうるライフイベントです。その時々によって仕事と家庭へのウエイトのかけ方は変わるとしても、仕事と家庭の両立は大切なことです。

④病院と自分自身の方向性の違い
 獣医師としての経験が長くなると、徐々に自分自身の考え方ができていくものです。治療方針や使用したい薬、飼主さまとのやり取りなどが勤務先の院長と合わなくなっていくことがあります。病院と自分自身の方向性の違いから転職を考えるケースもあるでしょう。

獣医師の転職には以上の理由が多いと思われます。

どのような病院に転職したいのか検討する

では、転職先としてどのような動物病院が考えられるのか検討していきます。自分自身の実力や目的を考慮したうえで転職希望の動物病院を探しましょう。ミスマッチが起こると再度転職することを余儀なくされるかもしれません。

①専門病院
 極めたい分野があるのであれば専門病院に転職するのがベストでしょう。自分だけでは動物病院を探すことが難しい場合は、卒業大学の先生方に相談したり学会に参加して講演や症例発表を聞いてみましょう。学会の場合、所属している動物病院名が記載されているはずなのでそこから専門性などを確認できます。また、専門雑誌を購読するなどし情報を収集することも大切です。具体的に転職候補の病院が決まればできるだけ長い日数の病院見学をお願いして決めていきましょう。

②1日の症例数
 症例数が少ない、反対に症例数が多くて一人一人の患者をじっくり診察することができないなど、症例数については2つの転職理由があると思います。例外としては、呼吸器科、皮膚科などの専門分野の症例だけを診ていきたいというケースもあるでしょう。外部から症例数を確認することは難しいので、希望の病院に実際に出向いて確認しましょう。
 1日の来院患者数が多すぎて流れ作業のような診察が嫌だからという理由なのか、来院患者数は多くても1つ1つの症例にじっくり取り組みたいのかは、似て非なるものです。よく検討しましょう。

③院長との相性
 院長との相性が合わないという理由の転職は意外と多いのではないでしょうか。出身大学や勤務した病院の違いは手技や治療方針に差をもたらすことがあります。獣医師として仕事を続けていくうちに自分の考え方ができてくるのはむしろうれしいことです。残念ながら各動物病院には診療方針があるので、次第に合わなくなっていく場合には自分の考えと合う動物病院や共感できる考えを持っている獣医師の下でスキルアップを考えるのも良いと思います。
 
④遠方への転居が可能か
 個人が経営している動物病院の場合、転勤はありませんが、グループ病院や企業病院の場合は転勤がおこるケースもあります。
 また、転職希望先が遠方で転居が必要な場合は家族とよく相談しましょう。特に結婚している場合には、一緒に転居することが難しいケースもあると思います。独断で判断せず家族との話し合いをしっかりしましょう。

⑤グループ病院
 グループ病院ではセミナーや勉強会が行われることが多く、特に人数の多い病院などではマンツーマンの指導が行われたり、入社当初は研修会が開かれたりとスキルアップにつながる仕組みが構築されている場合が多いです。さらに経営も安定していることが多いでしょう。
 一方、グループ間での転勤などもある場合がありますし、学会参加やセミナー受講がノルマとなっている病院もあります。
 グループ病院だけではありませんが、メリットとデメリットをよく確認したうえで転職を考えましょう。

転院する目的を明確に

転院する際には以下のことを明確にしましょう。

①転院する目的は何か

 転職する理由は先に紹介しました。その中でも職場の環境が嫌で転職したいという場合は、どのような環境であれば自分の実力を最大限発揮することができるのかをよく考えない限り同じことを繰り返してしまいます。転職理由が不明瞭な場合や転職を繰り返している場合は採用が難しくなる場合もあります。

 また、ステップアップを目指している場合は、現在どこまで修得しているのかや手術件数、自分が担当した症例数やその内容などを提示できる方が高評価につながります。実際転職したさいに、どこから指導する必要があるのか、即戦力としてどこまで任せることができる人なのかを判断する目安になりますので準備しておきましょう。

②転院したのちに目指すものは何か

 獣医師が修得していく知識や技術は数年で網羅できるものではありません。そして転院すること自体は目的であってゴールではありません。環境を変えたい、スキルアップしたい、ライフイベントなどさまざまな理由はありますが、その内容にかかわらず転院したのちに何を目指すのかは明確にしておきましょう。漫然と転職すれば、前職場とほぼ変わらない毎日になる可能性はあります。職場という環境を変えることはきっかけになりますが、せっかく環境を変えたのであれば自分自身も変わる必要があります。日々の診療の中で半年後にはできるようになることを決めるなど目標を決めましょう。

転職するならどんな病院が理想なのか

転職するならば自分が理想とする病院に転職したいものです。ここだと思って転職しても実際に仕事が始まったら、思っていた病院と違うということは避けたいものです。
 ・給与
 ・福利厚生
 ・教育体制
 ・診察内容(診療をどこまでやらせてもらえるのか)
 ・人間関係
 ・施設設備
 ・通勤のしやすさ
など、さまざまな理想があると思います。
自分の理想が全てかなう環境に転職できることは難しいかもしれません。しかし、転職するにあたってこれだけはという条件は決めておきましょう。インターネット上に公開されていない求人情報もありますので、転職サイトなどに登録しておくこともおすすめです。

まとめ

今回は「転職するならどんな動物病院を選べばよいか」について解説しました。転職の理由はさまざまありますが、理想とする転職先を探す際には「転職の理由」「転職の目的」「転職するにあたっての必要条件」を明確にしたうえで探すようにしましょう。この3点を曖昧にしてしまうと転職したのに何も変わらなかったという残念な結果に終わってしまう場合があります。しっかりリサーチして理想の病院に転職できるように取り組みましょう。

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