獣医師の転職2025.07.25
獣医師の資格や専門スキルを活かせる業界別転職先ガイドを徹底解説

獣医師国家試験に合格した後、獣医師の約半数以上が小動物臨床に進むと言われていますが、実際には3年以内に離職・転職するケースも少なくありません。
労働環境や将来への不安、人間関係など、様々な理由で「本当にこのままで良いのか」と迷いを抱える獣医師が少なくないのが現状です。
一方で、獣医師の国家資格や専門知識は、医療・科学・行政・ペット産業・教育といったさまざまな分野で求められており、「臨床以外」のキャリアも数多く存在します。
本記事では、これから就職を考える獣医学生や、キャリアに悩む若手獣医師に向けて、「獣医師の資格を活かせる業界」や「異業種転職」「将来の不安を解消するキャリアパス」について、網羅的に解説します。
獣医師の転職先・業界の全体像をつかむことで、自分に合った道を見つけるヒントにしてみてください。
目次
獣医師の資格で目指せる主な業界・職種一覧【早見表】
業界 | 特徴 | 就職の しやすさ |
収入の目安 | やりがいの 傾向 |
---|---|---|---|---|
小動物臨床 | 動物病院での診療・手術が中心 | ★★★★☆ | ★★★☆☆ | ★★★★★ |
産業動物臨床(NOSAI等) | 地域の畜産農家と連携、予防獣医療も重視 | ★★★★☆ | ★★★★☆ | ★★★★☆ |
公務員(行政) | 食品衛生・検疫・動物愛護など、社会貢献性が高い | ★★★☆☆ | ★★★★☆ | ★★☆☆☆ |
製薬・研究職 | 非臨床やGLP、基礎・応用研究など多様 | ★★★☆☆ | ★★★★★ | ★★★★☆ |
企業(ペット関連) | 商品企画・カスタマーサポート・営業など幅広い | ★★★☆☆ | ★★★☆☆ | ★★★☆☆ |
教育・学術支援 | 講師・実習指導などで後進育成に携われる | ★★★☆☆ | ★★★☆☆ | ★★★★☆ |
異業種(IT・コンサル等) | 医療知識を活かしつつ全く別の分野で活躍 | ★★☆☆☆ | ★★★★☆ | ★★★☆☆ |
獣医師の資格を活かせる業界①|小動物臨床(動物病院)
メリット
・学んだ知識、専門性がダイレクトに活かせる
・飼い主との信頼関係がやりがいにつながる
デメリット
・労働時間が長く、夜間対応も多い
・収入が安定せず、地域差が大きい
→都市部の競争激化/地方は人手不足
こんな人におすすめ
・手術・診療にやりがいや情熱を持てる人
・動物や飼い主と直接向き合いたい人
業界②|産業動物分野(家畜・NOSAIなど)
メリット
・地域社会と密接に関わる公的な役割が果たせる
・地方での安定した雇用・収入が見込める
デメリット
・緊急対応や24時間体制の現場もある
・畜産農家との信頼関係構築が重要
こんな人におすすめ
・地方で働きたい人
・予防医学や家畜衛生に関心がある人
・社会的使命感を持ちたい人
業界③|公務員獣医師(保健所・検疫・動物愛護センター)
メリット
・安定した収入・福利厚生、土日祝日が休み
・食品衛生や動物愛護に貢献できる
デメリット
・公務員試験に合格する必要がある
・臨床とは異なるスキルが求められる
・希望していない職種に就く可能性も
こんな人におすすめ
・安定した働き方を求める人
・社会貢献を重視したい人
・行政職や制度に関心がある人
業界④|製薬・研究・アカデミア分野
メリット
・専門性を深められる
・高収入が見込める求人も多い
デメリット
・求人が限られるため競争率が高い
・研究職は任期付き・契約制も多い
・博士課程が必須な場合も
こんな人におすすめ
・専門的な知識を追求したい人
・非臨床の分野で長く働きたい人
・データや試験を扱うのが得意な人
業界⑤|ペット関連企業(ペットフード・メディア・サービスなど)
メリット
・商品企画やPR、マーケティングなど多彩な働き方
・リモートワークやフレックスタイムも増加中
デメリット
・臨床経験が必須な場合もある
・商業的な視点が求められる
こんな人におすすめ
・新しいサービスやモノづくりに興味がある人
・プレゼンや情報発信が得意な人
・柔軟な働き方を望む人
業界⑥|教育・専門学校・学術支援
メリット
・後進の育成に関われるやりがいがある
・臨床経験や学術知識を直接仕事に反映できる
デメリット
・教える力やプレゼン力が必要
・講師や教員職の求人は地域差が大きい
こんな人におすすめ
・人前で話すのが得意な人
・若手を支援したい人
・教育や知識伝達に関心がある人
業界⑦|異業種転職(コンサル・IT・営業など)
メリット
・高収入・成長産業で活躍の場が広がる
・医学的知識・倫理観が信頼される
・自分のスキルを幅広く活かせる
デメリット
・新たな知識やスキルの習得が必要(IT・英語・ビジネススキルなど)
・臨床と全く異なる文化・用語・働き方に順応する必要がある
こんな人におすすめ
・データやロジカルな思考が得意な人
・新しい分野に挑戦したい人
・社会課題解決やビジネスへの関心がある人
自分に合った転職先を選ぶための3つの軸
① 自分の価値観
・安定志向 or チャレンジ志向?
・土日休みや勤務時間
自分の価値観として、堅実で手堅い安定志向か、新しい事に挑戦していくチャレンジ志向かを見極めることは重要です。
さらに、土日休みや勤務時間など、働き方の条件も大切な判断基準になります。自分に合った環境を選ぶことで、長く充実したキャリアを築くことができます。
② 将来像の具体化
・5年後、10年後の自分を想像する
・働き方・今後のライフステージと合っているか
将来の自分を具体的に想像することは、キャリア選びにおいて大切です。
5年後、10年後の働き方やライフステージに、その職場や仕事が合っているかを考えることで、後悔のない選択ができます。自分の未来にフィットする道を描くことが、納得のいくキャリアにつながります。
③ 環境とスキルの整理
・自分が持っているスキル
・現在の転職市場で求められている能力を把握
自分の持っているスキル(臨床、研究、コミュニケーションなど)を整理し、強みを明確にすることは、転職活動の第一歩です。
同時に、現在の転職市場でどのような能力が求められているのかを把握することで、自分の価値を客観的に見直し、より適した職場やポジションを見つけやすくなります。
獣医師の転職における3つの“よくある誤解”
転職やキャリアチェンジを考える際、以下のような“思い込み”にとらわれている獣医師の方は少なくありません。私自身も、調べれば調べるほど不安になることが多々ありました。こうした誤解を解消することで、より柔軟で前向きなキャリア設計に繋がります。
誤解①「臨床から離れるのは“もったいない”」
確かに、臨床経験は獣医師としての貴重な財産です。しかし、それを「やめる=無駄になる」と考える必要はありません。
むしろ臨床で培った判断力やコミュニケーション能力は、公務員や企業、異業種でも高く評価される“汎用スキル”です。視野を広げれば、臨床経験を活かせる場はたくさんあります。
誤解②「他業種に行くには特別な資格やスキルが必要」
もちろん、業界によっては専門知識やツールの理解が求められますが、転職の初期段階から“すべてを備えている”必要はありません。
今ある経験や知識をどのように応用できるかが重要です。例えば、統計やITスキルは働きながら身につけられるものも多く、職場がサポートしてくれるケースも増えています。
誤解③「一度転職するともう戻れない」
臨床以外の道に進んだ後でも、「やっぱり臨床に戻りたい」と思うことがあるかもしれません。実際に、再び動物病院に戻るケースや、非常勤・パートで両立する人もいます。
キャリアは一本道ではなく、時代と共に多様な働き方が受け入れられつつあるのです。
よくある質問(FAQ)
Q1. 獣医師の資格を持っていても、臨床以外に本当に転職できるの?
A. 多くの企業が獣医師の知識と論理的思考力に注目しています。特に製薬・公務員・ペット産業などでは強みになります。
Q2. 異業種への転職は資格がムダにならない?
A. 臨床スキルそのものは使わなくても、「医療知識」や「責任感」「対話力」はどの業界でも活きます。
Q3. 今すぐ転職を考えていなくても準備しておくべきことは?
A. 自己分析・業界研究・情報収集はいつ始めても無駄になりません。まずは転職エージェントに登録しておいて、希望する地域の求人情報を受け取るのもおすすめです。
ただし、転職エージェントを介して就職した場合、企業側に手数料(年収の30~40%程度)が発生することがあったり、転職者のマッチ度ではなく利益のために求職者の性格に合わない職場を紹介する転職エージェントも存在するので注意が必要です。
Pettie獣医師キャリアでは、転職経験のある獣医師と実際に面談して相談しながら転職を進めることができるので、是非ご活用ください!
まとめ|獣医師のキャリアは一つじゃない!
獣医師の資格は、臨床だけでなく多様な業界で活かすことができます。特に「将来が不安」「今の働き方に違和感がある」と感じている獣医師や獣医学生にとって、幅広い選択肢を知ることはキャリアの可能性を広げる第一歩です。
私自身も臨床の経験しかなかったのですが、現在は臨床を続けながら完全未経験であるIT系の仕事に携わらせていただいています。転職や異業種進出に不安を感じることもあるかもしれませんが、適切な情報収集と準備をすることで、理想に近い働き方に近づくことができます。
あなたの「得意」や「興味」を大切に、柔軟な視点で将来を考えていきましょう。